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二十七 酔いは覚めたが
「あっ、ん、……ぅ、ん!」
激しく腰を打ち付けられ、甘い声が切れ切れに響く。鮎川のキスに、岩崎は息を切らしながら夢中で唇に吸い付く。舌を伸ばし、何度も何度も啄むように唇が離れ、また深く重なり合う。
内臓を抉られるような深い結合に、岩崎は頭がクラクラした。酒の酔いはとっくに覚めていたが、快楽に酔わされる。深い部分をぐりぐりと擦られ、何度も執拗にナカを擦り上げられた。
「んぅ……あゆ、かわ」
鮎川の指が乳首を弄ぶ。そこは嫌だと言ったのに、鮎川は辞める気配がない。そこを弄られると、もどかしくて、くすぐったくて、切なくて、変な気分になる。自分は男だから、そんな部分を触らなくても良いのに。そのくせ、触って欲しい場所には触ってくれない。
早くイってしまいたくて、自身の性器に手を伸ばす。後ろを貫かれながら前を弄ることが、気持ち良くて、頭が変になりそうだった。
「あ、あ、んっ……! あっ、は、ぁっ……、気持ち、い……、鮎川っ……!」
「岩崎っ……!」
鮎川の動きが、一層激しくなる。脚を掴まれ、強引に開かれ、深いところまで抉るようにぐりぐりと貫かれた。岩崎は自身の性器の先端を弄り、ビクビクと身体を震わせる。ひときわ大きく身体をしならせ、精液がはじける。
「あ、あ――っ……!」
ゾクゾクと震えながら、岩崎は精を吐き出した。その様子に、鮎川の口端が緩む。
「先にイくなよ」
指先で頬を軽く抓られ、「ん、だって」と拗ねた口調で鮎川を見る。本気で、咎めているわけではないようだ。
「……俺も、イくぞ……」
小さくそう言い、荒い呼吸を吐き出し、鮎川も達する。鮎川はずるりと性器を引き抜くと、岩崎の腹の上に精液を吐き出した。
「っ……、く」
射精の虚脱感に、二人してベッドに倒れ込む。岩崎はハァハァと息を切らせながら、チラリと鮎川を見た。酔いは覚めているし、記憶を失ったわけでもない。自分が何をしたかも覚えている。
(……怒ってんのか、怒ってないのか、よくわかんねえな……)
岩崎のしでかしたことに対しての、『お仕置き』かもしれないが、そうでないかも知れない。少なくとも、岩崎にはそうは見えなかった。あれは酒のアクシデントで、そこまで真剣にとらえるようなことではないのかも知れない。
「……」
だからこそ、岩崎はなんとなく、鮎川の方に擦り寄った。肌をピタリと寄せ、鮎川の手に指を絡める。鮎川はチラリと岩崎を見たが、文句は言わなかった。
「あゆかわ」
熱を孕んだ声で名前を呼ぶ。鮎川がピクリと肩を揺らした。
「……もう一回」
「……」
求めに、鮎川はすぐには反応しなかった。岩崎がじっと横顔を見つめるのを、わざと無視するように黙っている。だが、無反応は長く続かなかった。
ぐい。肩を押して、鮎川がのしかかる。唇が重なり、舌が絡み合う。火が点いてしまえば、あとはあっという間だった。
互いに足りないのは言うまでもなく、利害が一致すれば言い訳も言葉も要らなかった。ただ互いに身体を貪り合う。
鮎川は自身の性器を掴んで何度か扱くと、硬度を取り戻した性器をアナルに押し当てた。先ほどまで散々虐められていた穴は、受け入れるためにあるように鮎川を呑み込んでいく。
「あ――、ん」
まだ先ほどの感触が残る内部が、ぞわぞわと震える。
快楽に染まる岩崎を、鮎川は腕を掴んで引き起こした。そのまま、抱きかかえるようにして腰を掴む。
「たまには動いてみろよ」
「――っ、ん……」
下から揺さぶられ、岩崎はカァと頬を染める。されるがままだったが、今度は動けと言う。そうしなければ、快感は得られない。
「っ……」
しぶしぶ、身体を上下に揺さぶる。鮎川が見ているのが、恥ずかしかった。
汗で張り付いた髪を、鮎川の指が払う。
「岩崎……」
鮎川の顔が近づいた。キスを、されると思った。
瞼を閉じ、薄く唇を開く。何度目になるか分からない口づけ。唇が、僅かに触れた、その時――。
ピンポーン。
玄関から聞こえた音に、ビクンと肩を揺らす。二人とも、無言で固まった。
ピンポーン。再度、音が鳴る。
どう反応すべきか迷っているうちに、玄関扉の向こうから人の声が聞こえた。
「岩崎ー、大丈夫ー?」
「寝ちゃったのかな……」
栗原たちの声だ。心臓がバクバクして、胃のあたりがきゅっと鳴る。鮎川も、黙ったままだ。
やがて、諦めたらしく扉の前から人の気配が消える。
「……」
思わず、鮎川を見る。目が合った。先に笑ったのは鮎川だった。
「っは、焦った……」
「……っ、うん」
鮎川がチュッとキスをする。それから、下からグイグイと突き上げて来た。
「ほら、動けよ」
「っ……、あんたな……」
催促するように、尻を掴まれる。岩崎は仕方がなく、言われるままに腰を振った。
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