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三十八 甘い、切ない。
まだ熱を持っていない性器に、ゆっくりと舌を這わせる。バイブで疑似フェラをしたときに、同期の女から「本物でやれ」と煽られたときには、冗談じゃないと思ったものだが、不思議と抵抗はなかった。
(何回も、触ってるしな……まあ、鮎川には、最初から抵抗なんかなかったけど)
手で扱きながら何度も竿を舐めてやると、途端に硬度を増してくる。鮎川が自分を見ているのが解った。付け根部分から先端部分までを何度も舐め、睾丸を吸う。そうしているうちに、先端から蜜が零れて来た。岩崎は咥内に深く肉棒を咥えると、そのまま唇で扱くように顔を動かした。
「っ……」
鮎川の荒い息遣いに、自然と興奮して、舌と唇を使って丹念に愛撫を繰り返す。鮎川が感じているのが、嬉しかった。鮎川の手が髪を掴む。怜悧な瞳が熱っぽく、自分を見ている。
「ん、ぅ……」
深く吞み込んで愛撫をする岩崎に、鮎川が耳たぶを愛撫した。ゾクゾクと皮膚が震える。
「……あんま、無理すんなよ」
「ん」
そんな言葉を聞きたいわけじゃない。苦しさから滲んだ涙を鮎川に向け、一度唇を離した。唾液と精液が混ざった粘液が、口から糸になっててろりとたれる。
「ぅ、ん……気持ち、良い?」
「……良いよ」
髪を撫でられ、うっとりと目を細める。鮎川に気持ち良くなって欲しい一心で、先端をちゅうっと吸った。
「っ……」
そのまま、また喉の奥まで呑み込んでいく。じゅぷじゅぷと音を立てて、唾液を絡めながら何度も呑み込んでいく。そのうちに、鮎川が小さく震えた。
「岩崎っ――」
「んぅ、んっ……!」
ビクビクと震えながら吐き出された精液を、喉奥で受け止める。びゅくびゅくと出続ける精液をぢゅうっと吸い上げ、そのまま飲み込んだ。
「ん、マズ」
「……っ、お前……」
恥ずかしそうにする鮎川に、ニッと笑って舌を出す。鮎川の親指が、唇をこじ開けた。
「……飲んでんの」
「良かった?」
「上手だった。練習したかいがあったな」
頬をむにっとつままれ、からかわれる。甘いじゃれ合いに、岩崎は笑いながら「やめろよ」と腕を伸ばした。求めにこたえるように、鮎川は岩崎の腰を抱き寄せキスをする。
「――ん、っ……」
「まあ、でも、口も良いけどこっちも使いたいな」
双丘を掴まれ、左右に割り開かれる。岩崎は顔を朱に染めて、身を捩った。
「っ、ちょ」
いつの間に取り出したのか、ローションの蓋を開け、先端のノズルをアナルに押し当てられる。そのまま、中にローションを注入された。
「ひぁ、んっ!」
「なんだ、可愛い声出して」
「っ、ばっか……! あんた、直接っ……」
「冷たかった?」
ノズルを引き抜かれ、中に注入されたローションのぬるぬるした感触に、もどかしそうに腰を揺らす。
「っ、ぬるぬるっ……してっ……」
「今度は、僕が気持ちよくしてやる番だろ」
「あっ!」
ローションの滑りを借りて、再び勃起した性器がずるんと一気に入りこむ。気が付けば体制を入れ替えられ、ベッドに組み敷かれていた。
「あゆ……っ」
脚を左右に開かされ、ぐりっと奥まで押し込まれる。そのまま一気に腰を引かれ、ぱちゅんっと奥まで貫かれた。
「あ! んっ……!」
じゅぽっ、じゅぷっと、擦られるたびに音が響く。鮎川の手がTシャツを胸まで捲り上げ、胸にローションを塗りつけた。乳首を指先でつままれ、びくんと身体がしなる。
「んぁ、んっ! あっ、あ、あっ……!!」
甘い声を上げる岩崎を、鮎川は発情した獣のような瞳で見下ろす。中を掻きまわされるような、奥まで暴かれるような激しい求めに、岩崎は顔を赤くして口元を押さえた。そうしていないと、何かが漏れてしまいそうだった。
「んぅ、ん……、んぁ、あ、ぁ……」
「気持ちいい?」
先ほどとは逆に問い返され、ゾクッと背筋が震えた。
「なぁ」
「っ、ん……」
小さく頷く岩崎に、鮎川は意地悪な笑みを浮かべ、ずんっと奥まで突き刺した。
「――っ!」
ビクビクと身体が震える。
「ナカ、擦られんのが良いの? それとも」
指先が、両の乳首をきゅっと摘まむ。
「こっちは? 良くない?」
「ぃうっ……!」
涙目になって顔を赤くする岩崎に、鮎川が笑う。
「どっち?」
「っ……、どっち、も……っ」
「へえ」
ぐっと膝を掴み、一層激しく腰を揺らされる。じゅぷじゅぷと音が室内に響く。
「あ、あっ、あっ……鮎川っ……! あんま、激しく……ない、でっ……」
「なんで? 気持ち良いんだろ?」
「お、音……、がっ……」
「……もしかして、音が恥ずかしいの?」
指摘され、余計に恥ずかしくなって、岩崎は顔を背けた。鮎川は「ははあ」と笑って、わざと音が立つように挿入を繰り返す。ローションが多いせいか、いつもより音が激しく、いやらしかった。
「っ……!」
ぐちょぐちょと掻きまわされるたびに、岩崎は甘い息を吐き出す。その様子が楽しいらしい鮎川に、翻弄されるように愛撫される。
「あ、あっ……、鮎川……」
岩崎は吐息を吐き出し、腹のあたりを撫でた。
「ここ、入ってる感じ、好き……」
「っ……」
鮎川はビクッと肩を揺らし、目の下に朱を走らせた。唇をぎゅっと噛んで、小さく呟く。
「バカが」
呟きは、岩崎の耳には入らなかった。そのまま激しく貫かれ、白濁を注ぎ込まれる。同時にビクンと大きく身体をしならせ、腹の上に精液を吐き出した。
「――っ!!!」
顎を掴まれ、唇を塞がれる。射精の余韻とキスのせいで、岩崎は半分、意識を失った。
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