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リナと遊
ぼんやりと課題をしていたら、いつの間にか放課後になっていた。今日はバイトだけど、月水金は写楽のところに行けるから嬉しい。
昼休みも、休み時間だって……想像するだけで、バイトも俄然やる気が出てきた!
いつもやる気がないわけじゃないけど、モチベーションは大事だと思うから。
カバンを持って、教室を出ようとしたら……
「はい、ストップ」
ドアの前で、女子に声をかけられた。
「あ、あの?」
「アンタに話があるんだけど、ちょっと顔貸しなさいよ」
この派手な人は、たしか『自称』写楽の彼女のリナさんだ。
「僕急いでるから、歩きながらでいい?」
「はぁ!?話があるって言ってんでしょ!?」
「そう言われても、僕には君と話すよりもっと優先する用事があるから」
歩きながらじゃできない話ってなんだろう?昨日、僕が写楽に話したような内容じゃあるまいし。それなら僕も立ち止まるけど。
「な、生意気~ッ、ダサ小憎のくせに!ちょっと写楽に気に入られたからっていい気になってんじゃないわよこのチビ!大体アンタ何様のつもり!?男の癖にペット志願とか何考えてんのよ、この変態!!」
あー、クラスメイト達の前で言われてしまった……僕がそう志願したわけじゃないけど、写楽がそう言ったんだからもうそれは真実でしかない。
「ま、マジかよウメボシの奴!」
「何考えてんだ、あの犬神写楽のペットに志願!?」
「つーか犬神がそれ受け入れてんのか!?なんで!?」
「やっぱウメボシ変人すぎだろ」
「つか、変態だって……」
言われ放題だけど否定することもできず、僕はリナさんから顔をそむけて歩きだした。
もう話って終わったよね?話っていうか、罵倒だったけど。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
長い爪をした手で腕を掴まれた。リナさんの爪はカラフルでゴテゴテしていて、一体その爪でどうやって生活しているのか少しだけ気になる。聞いたら教えてくれるかな。
でも、ぐずぐずしてるとバイトに遅れて、バイトリーダーの高木さんに怒られてしまうから早く行かなくちゃ。
「悪いけど、君が聞きたいことは僕には答えられないから……」
掴まれた腕をブンと振り払った。僕みたいなのにこんな扱いされたことはないんだろうな。
リナさんはわなわなと唇を震わせながら僕を睨んでいたけど、僕にはその目を見返す時間の余裕がなかった。
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