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罪悪感と責任感

*** 帰さなきゃよかった。教室に帰ってからも、俺の頭を占めるのはアイツのことだけ。 あんな泣きそうな顔、させたくなかった 。恥ずかしさで涙を流す遊は可愛いけど、あんなに悲しそうな顔で泣かれると…… なんだこれ、罪悪感?なんで俺が……いや、俺が悪いんだよな、無神経なことを言ってしまった。俺のことを好いてくれてる奴に対して。 でも、好いてくれてる奴を傷つけたくないなら、クソモヒカンやリナの場合はどうなんだよって話だよな。別に奴等が俺の言葉に傷つこうが俺にとってどうでもいいし、他人事だ。 なんで、遊に対してだけ…… ああ、あれか? ペットに対する、飼い主の『責任感』ってやつ。 そうだな、そうに違いない。ペットてのは可愛がるもので、傷つけるものじゃねぇし。 早速3限目の休み時間に会いに行こうとしたけど、隣のクラスは移動教室だった。 まぁいいか、昼休みにはまた会うしな……。 空っぽの三組から帰ってきた俺の前にやってきたのは、いまだに俺の彼女を自称しているリナだった。 「ねぇ、写楽ぅ。一限目はペットくんと授業さぼったでしょ?だから4限目はぁリナとさぼってほしいの!」 「あぁ?別に溜まってねぇし」 リナからのサボりの誘いはイコール、セックスの誘いだ。そういう方式がすでに俺の中ではできていた。でも朝から二発も遊と抜いたし、妙に興奮したからしばらく女はいらねぇ。 それに色々と面倒だから、もう簡単に女は抱かないって決めたばかりだ。 「は!?溜まってないってなんで?自分でしてるの?それとも、別の女子とエッチしたのぉ!?」 「どっちでもねぇよ」 一人でもシてねぇし、遊は女でもない。 「てゆーかぁ、別に毎回リナからエッチに誘ってるんじゃないもん!いつも写楽がリナの話し聞くのめんどくさいからってエッチに雪崩れ込むだけでしょ~」 まあ、そうかもしれない。 「でもでも、今日の話は絶対退屈させないよぉ?リナ、あのペットくんの情報色々聞いたの!写楽の知らない情報だってあるかもよ?聞きたくない?」 遊の情報? 「写楽がなんであの子をペットに認めたかわかんないけどぉ……リナ、写楽は騙されてるだけだと思ってるから。ちゃんと根拠もあるんだよ?」 ニコニコと笑いながらリナは言う。リナは話し方は馬鹿っぽいけど、妙に聡いところがあるから、あんまり油断できない女だ。(二重人格なのは気付いてるけどな) 「……いいぜ。聞かせろよ、俺が遊に騙されてるっていう、お前の考察」 「そうこなくっちゃね!」 俺とリナはチャイムが鳴るギリギリ寸前に教室を出て、場所を移動した。 * 俺たちが来たのは旧校舎だ。何組かサボりの先客がいるから、誰もいない教室を適当に探して中に入った。 遊にこの旧校舎に手紙で呼び出されたのは、つい一昨日の話だ。それにしても、エアコンの付いてない旧校舎の教室は蒸し暑い。 「ふー、あっつぅい!こんなホコリまみれの床の上でよくエッチできるなぁー!ねぇ、見た?」 「ここに来るまで二組はヤってたな」 「リナともしたくなった?でも床はイヤッ」 「なんねぇよ。暑いから早く遊の話聞かせろ」 遊の名前を出すと、ピクッとリナの鋭利な眉毛が片方だけ動いた。 「写楽、昨日から遊、遊って。そんなにあのペットが可愛いの?ただのダサ小僧でしょ」 「ほっとけよ。あのダサさがいいんだよ」 「新鮮ってこと?じゃあリナも明日から清楚なお嬢様ファッションにしてこようかなぁー、それで写楽の気が引けるんならっ」 「あいつは中身が伴ってんだよ」 「なにそれぇ……」 なんで俺はさっきからリナを挑発するようなことばかり言っているんだろう、あとから面倒なことになるのは目に見えてるのに。 それよりさっさと本題に入って欲しい、 俺が遊に騙されてるとかいうのは心底どうでもいいが、俺の知らない遊の情報は気になる。 本人に聞けば済む話だけど、何を聞いていいのか、何を聞いたら駄目なのか、俺にはその辺りがよくわからないから。 また、さっきみたいな顔はさせたくないし、それなら、情報はなるべくたくさん持ってたほうが地雷はわずかに避けられるだろう。

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