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リナの話

そして、観念したのかようやくリナが本題に入ろうとした、前置き付きで。 「……もぉ。写楽さぁ、ちょっとペットのこと信用しすぎじゃないの?あいつ、あんなダサ小僧なナリしてるけど中身はそーとーなヤリ手だよ?あーゆー女って多いから、リナ一発でわかったもん!これからリナが話すことに、写楽ショック受けてここで暴れないでよね?」 相当なヤリ手、という単語にドキッとした。まぁ、大体合ってる。(なんとなく) リナの言ってる意味とは多分違うだろうけどな……。 「わかったわかった。で?」 「アイツが写楽のペットに志願した理由はコレしかないと思うの……ズバリ、お金よ!!」 ………… 「……はぁ?」 何言ってんだ、このアマ。 俺はもうこの時点で呆れて教室に戻ろうと思ったが、リナはお構い無しに語りはじめた。ああ、やっぱり来なきゃよかった、暑いし。 「だからねっ写楽のペットになって油断させといて、何か写楽の弱みでも握ろうと思ってるわけ!なんてったって写楽は犬神グループの御曹司でしょぉ?スキャンダルとかもってのほかってゆーかぁ、とにかく最終的には揺すろうとしてるわけ!あいつの目的はお金なの!」 「……根拠は?」 リナの話はつまらなすぎてタバコ吸いたくなってきた。けど舎弟がいないから火がない。 つーか不良に対してスキャンダルがもってのほかとか何言ってんだろうな、マジで。むしろスキャンダルしかないだろうが。 「そんなの決まってるでしょぉ、アイツが捨て子だからよ!」 ……………え? 「それ聞いた時に思ったの!アイツはね、何もかも持ってる写楽のことが本当は憎いんじゃないかって。だから逆恨みっていうか、写楽に一泡吹かせてやりたくて近付いたってわけ!じゃなきゃ他に理由なんて……」 「おいリナ」 「え?」 「その話、いつ、誰から聞いた?」 いきなり立ち上がって態度を変えた俺に、リナは少なからずビビった様子を見せた。 「え……昨日、3組の伊藤ってヤツから聞いたよ?」 「噂話か?」 もしそうなら、俺は今すぐその伊藤ってヤツを半殺しにしてやる。授業中でも関係ねぇ。 「え……違うよぉ。だって、伊藤は梅月から直接聞いたって言ってたもん。梅月は赤ちゃんの頃に捨てられた子で、いまも梅月園っていう養護施設で暮らしてるんだってぇ……てゆーか写楽、そのことは本人から何も聞いてないの?」 「……………」 聞いてない。 つーかマジで、なんだそれ。 「……写楽?どこいくの?戻ってもまだ授業中だよ!」 なんで、俺は 「写楽!ねぇ写楽ってばぁ!」 周りの音が何も聞こえなくなった俺の頭に浮かんできたのは、少し寂しげに笑う遊の顔ばかりだった。

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