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3組の教室にて

教室に向かう途中、遊のいる3組の教室を覗いてみた。3組の奴らは俺に気付いてギョッとしていたがどうでもいい。 遊は……あ、いた。 まだ、頭に包帯を巻いていた。俺は後ろからこっそりと遊に近づき、真上からつむじを強めに押した。 「イテッ!……あ、写楽!?」 「よう」 「お、おはよう」 俺の顔を見ると、遊はカァァと安定の赤面をした。 「まだ包帯取れねぇのか」 「うん。でも、ガーゼが落ちないようにしてるだけだから。髪の毛にテープ貼りづらいし。今日も帰りに病院で消毒してもらうし、そろそろガーゼ取っても大丈夫そう」 「そうか。土曜はバイト、当然休んだよな」 「あの、それが」 「ん?」 遊は、何か言いにくそうに口をもごもごさせている。俺は立ったままいるのも目立つので、前の奴の席に座って遊の正面を向いた。 「なんだよ」 「バイト、クビになっちゃったんだ」 「はあぁぁ!?」 俺の声に、3組の教室が人も合わせて震えた。 「何でだよ!悪いのはあのクソデブじゃねぇか!!つーかあいつ捕まってねえのかよ!」 蹴り、手加減したつもりねぇのに!脂肪で衝撃吸収したのかよ!? 「う、うん。どうやらそうみたい。それで店長に告げ口したみたいで、僕が一方的に高木さんを殴ったってことになってた……訴えられないだけでも感謝しとけよ、って店長に電話で言われたよ。それで、今月の僕の給料は、治療費として高木さんに渡すって」 「はぁああ!?なんだそれ、俺が直談判しに行ってやんよ。お前ずっとアイツにセクハラまがいのこともされてたんだろ、そのことも含めて誤解解いて、バイト代も取り返してやらぁ! つーか店長もクソじゃね?いっそ弁護士立てて本格的にやりあうか?」 「い、いいよそんなの!僕ももう、関わりたくないから」 遊が誤解されたままなのはムカつくが、関わりたくないというのは切実な本音だろう。部外者の俺(思いっきり関係者なんだが)がとやかく言うことじゃないが……納得いかない。 「写楽が僕の代わりに高木さんに仕返ししてくれただけで十分だよ」 ちくしょう、なんか俺の方が悔しい。 「あ、あのう犬神クン、そこボクの席なんだけど……」 「あ?」 「ヒィッ!すいません!」 俺の横にここの席の奴が立ってた。俺が奴に凄んだあと丁度予鈴が鳴ったので、仕方ないと言わんばかりに舌打ちをして立ち上がった。 「チッ……、じゃあ遊、昼休みな」 「うん」 俺は、自分のクラスへ戻った。

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