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彼の言葉
***
今日も僕は、早起きをしてお弁当を作る。もうスーパーからのお惣菜はタダで貰えないから、余計にオカズを作らなければいけない。冷凍してあるオカズばかりじゃ、きっと写楽の肥えた舌は満足しないだろうし。
それにしても、昨日はごはん美味しかったなぁ……あんなに高そうなお寿司と天麩羅、初めて食べた!なんだか外人さんが喜びそうなメニューだったけど、僕、外人さんと思われてたんじゃないよね?
「……」
うん、ないな!窓に映る自分の姿を見て、すぐに納得した。
写楽の過去について、話してもらった。写楽のことをなんでも知りたいと思ったのは嘘じゃないけど、僕なんかが聞いてよかったんだろうか……というか、どうして僕に話してくれたのかな?僕は彼にとって ただのペットでしかないのに。キスも、それ以上のことも……
思い出しそうになったので、ぶんぶんと頭を振った。
――いけない。
勘違いしたら、いけない。彼にとって僕は、今だけのただの戯れでしかないんだから。
でも、
『殺してやろうか』
嬉しかったな……。
『いつか俺がお前を殺してやるよ。お前の、一番望む方法で』
「ふふっ」
「遊兄ちゃん、朝から一人で笑ってて気持ち悪ぃな」
突然、足元の方から声がした。
「あぇ!?お、起きてたの、明良!?」
足元に敷いてあるキッチンマットに、何故か体育座りで僕をじいっと眺めている小学5年生の明良 が居て、僕がその存在に気付くと、すっと立ちあがった。
「起きてたよ、さっきから。遊兄ちゃん何かエッチなこと考えてただろ」
「え、エッチなことって」
「隙あり!!唐揚げもーらいっと!!」
「あ、コラッ!!」
おにぎりを握っている最中だったので、追いかけて捕獲するのは不可能だった。
「もう!」
園の中では、極力写楽のことは考えないようにしなくちゃ……。
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