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いつもの遊

「う……ん……」    俺のベッドで寝ている遊が、一瞬身じろぎした。気がついたのか? 「遊!」  俺は遊の手を握り声をかけた。俺の声に反応したのか、遊はゆっくりと目を開けた。 「しゃ……らく……?」 「……大丈夫かよ」 「ん……」 「……よかった……」  バカみたいだけど、このまま遊が目を覚まさないんじゃないかって思ってた俺は死ぬほど安堵して、息を吐きだした。後ろで橋本先生が見てることも、忘れていた。 「ちょっ、今何時!?って、痛ぁぁ!!」  はっきり覚醒したらしい遊が、いきなり身体を起こしたので俺はびっくりして思わず後ろに倒れそうになった(ズバ抜けた運動神経でなんとか踏みとどまった)。  遊は思い切り起きたのはいいものの、ケツ穴の痛みがダイレクトに響いたらしく再びベッドに寝転んだ。 「ケツの穴切れてんだからいきなり起きんなバカ!……10時、だな」 「え、僕そんなに寝てたの!?なんで起こしてくれなかったの……」 「あ?」  遊は俺の顔を5秒くらいじっと見つめていたが、そのあと徐々にいつものように赤面していって、右の鼻の穴からダラッと鼻血を零した。 「!?おい、遊鼻血出てんぞっ!先生ティッシュ!!」 「は、はいっ!?」  俺は慌てて、橋本先生が手渡してくれたティッシュを遊の鼻の中に突っ込んだ。遊はされるがまま、というかそのままフリーズしている。どうやらさっきのことを思い出した途端、頭が沸騰したらしかった。 「あ……あわわわ……嘘……うそぉ、ゆ、夢だよね?」 「何がだよ。俺とお前がセックスしたことがか?」 「!!!」  遊は声にならない声をあげて、布団を頭から被りそのまましばらく出てこなくなった。 「……」 「……くさい!!」 「まだシーツ替えてねぇからな」  乾いた精子の匂いが布団の中に籠ってしまったんだろう、遊は10秒ともたずに引きこもりを辞めて顔を出した。 「う……恥ずかしすぎて死にたい!僕を殺して写楽、今すぐ殺して!!」 「面白いから殺さねぇ」 「僕が望むやり方で殺してくれるって言ったじゃない!」 「じゃあそのまま恥ずかしさで悶え死ねよ」 「ああああああ―――!!……くさい!!」  布団に潜り込んでは臭いと顔を出す遊。さっきから何やってんだ、コイツは……とりあえず一方的にレイプ魔と決めつけられた腹いせに、意地悪してやった。 「あの、写楽様」 「あん?」 「先ほどの暴言、色々とすみませんでした」  橋本先生に、深々と土下座された。 「分かりゃいいんだよ」 * 「とりあえず塗り薬渡しておくから。コレ、痔のお薬ね。自分で塗るのもよし、写楽様に塗ってもらうのもよし」 「へ!?」 「お尻は大事にね、遊くん。しばらくはセックスしたらダメだよ」 「っ~~!!」  軽く自己紹介をしたあと、橋本先生は遊に薬を渡して俺の部屋を後にした。遊は塗り薬を持ったまま、またしばらくフリーズしていた。

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