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冷えた身体に君の熱
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夏でもちゃんとお風呂に浸かるのは、写楽の少ないこだわりの一つらしい。
セックスをした日はいつも僕も一緒に頂くんだけど、浴室は広いから二人でも全然狭くない。
梅月園ではほぼ毎日シャワーだから、最初は夏でも熱いお風呂に戸惑ったけど、彼の部屋のエアコンはいつも低めに設定されてあるので知らない間に冷えた身体には心地よかった。
おかげで、熱いお風呂のあとでも部屋はキンキンに冷えているのできもちいい。
少し、寒いくらいだ。でも、
「……来いよ」
今から沢山抱きしめてもらうから、平気。僕は 写楽の待つベッドに足を向けた。
初めて僕を抱いた日から、なんだか写楽は少し変わった 。態度や口調は以前のままだけど、僕を触る手が以前よりも優しくなった。
きっと、あの日僕が気を失ってしまったから、手酷くするのはやめたのかな……?
なんて、本当は気付いてる。
「……遊、」
「アッ、アッ、……しゃ、らくっ」
「さっきもシたから、ここ柔らかいな」
写楽は僕の後孔に指を出し入れしている。ぐちゅぐちゅ、といういやらしい水音に耳まで犯されている気分だ。
僕はきもちよくて、だらしなく涎を垂らしている。
「ンッ、も、入れて……?」
(写楽は僕に、情が移ったんだ)
「じゃあ、自分で広げて欲しがれよ」
「ッ……は、い」
僕は四つん這いになり、自分の穴に指を入れて写楽に向けて足を広げた。
「ハハッ、変態」
(犬や猫と同じように、僕は彼の従順なペットだから、それ以上でも以下でもない存在だ)
「ねえ、はやくいれて……?」
「……ッ、たっぷり味わえよ」
彼の猛ったモノが、僕の後孔に当てられた。そのまま、ずぶずぶと僕のナカに入ってくる。
「あ、ああっ、アーっ!」
「ッ……ぅ……!」
(決して好かれているとか、愛されているとか、そんなんじゃない。でも、僕は別にそれでかまわない。前にも言ったけど、恋人になりたいなんて言わないし、そもそも思ってないんだ。それでも彼に告白したのは……)
写楽は僕の両足を掴んで、僕の身体を前後に揺さぶっている。写楽のモノはダイレクトに僕の前立腺を掠めながら、ガツガツと何度も僕の奥を穿つ。
「あ、あああッ!写楽、しゃらくッ…ソコ、いいよぉ……!」
「遊、遊ッ……!」
「もっと、もっと突いてほしっ……!」
写楽の汗が僕のカラダに落ちてくる。僕はその汗を全て綺麗に舐め取ってしまいたい、と思う。
(あのとき僕を助けてくれた君に、とてもキラキラしていた君に、そのまっすぐな目に、一瞬でもいいから映ることができたら……)
「ああっ、も、イク……写楽、いきたい……っ!」
「は、イッちまえ……!!」
写楽は、僕を強く抱き寄せた。無意識なんだろうけど、その力強さが嬉しくて生理的でない涙が僕の目から溢れてくる。
(一瞬でいいから、きみに僕の存在を刻みつけたかったんだ)
「アアーッ……!!」
僕と写楽は、同時に精を吐きだした。僕のナカに注がれるソレを、僕の胎内に全て吸収してしまいたい。
僕は、写楽のペニスをきつく締め付けた。
(だから殴られたって、構わなかったのに)
「はぁ、はぁ、あ?何でお前、泣いてんだよ……?」
「わかんない」
写楽は僕の前髪をかき分けて、僕の顔を覗き見る。僕は泣き顔を見られたくなくて、右腕を顔に持ってきて顔を隠した。
(それなのに、今僕に触れる彼の手は、こんなにも優しい……お願い、優しくしないで。僕は君に優しくされる資格なんて、ないんだ)
「理由もなく泣いてんじゃねぇよ、馬鹿」
くしゃ、と前髪を軽く掴んで、そのまま頭を撫でてくれる。優しくされると更に涙は溢れて止まらなくなるのに、分かってやってるの?
(汚ない僕のカラダに、綺麗な君の手を触らせていること自体、おこがましいのに。僕は弱いから、君の手を振り払うこともできない)
「あのね、写楽」
「ん?」
「すきだよ」
「……知ってるっつってんだろ」
「ごめんね」
「……何謝ってんだよ、意味わかんねぇから」
好きになって、ごめんなさい。
こんな僕に情を抱かせて、ごめんなさい。
写楽は、慰めるように僕を強く抱きしめる。僕は抵抗せずに、大好きな君の匂いを沢山吸いこんだ。ずっとずっと、忘れないように。
いつか僕は、君の前から消えるから。
その時まで、君は何も知らないで、そばにおいていて……。
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