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天使と遭遇
***
「いってェ……ちっくしょう、犬神の野郎……!!」
放課後、珍しく一人で街をブラブラと歩いていたら全然顔も知らない連中に突然絡まれた。奴らは俺とトシはそう変わらないだろうが、私服だったからどこの高校かは分からない。奴らはこう言った。
『てめー自体に恨みはねぇが、あの犬神写楽と同じ学校の奴ってだけでムカつくからボコボコにしてやんよ!』
『……はぁぁ!?』
犬神写楽、それはウチの学校の問題児……俺もだけど。年下の癖にデカくて、その癖美形で、更に家は庶民じゃ想像もつかないくらいの大金持ちというムカつくことすら恥ずかしく思えるようなクソ野郎だ。(ヒガミって言うな)
でも俺は奴より年上だ。その上我が校の不良どもをまとめているボス!だから年下のヤローなんかにへこへこするわけにはいかねぇんだよッッ!!
けど、入学したての奴に絡んでボッコボコにされた……リベンジしようと思って奴が2年になってからも絡んだけど、やっぱりボッコボコにされた……。
そして今は、多分以前犬神にボッコボコにされたのであろう他校の野郎どもに、俺はボッコボコにされた。おかげで俺の顔は変形しまくりだ。
……もとからブサイクじゃねぇんだよ!!俺の鼻が曲がってるのは犬神のせいなんだからなぁぁ!!!
コレは間接的に犬神に殴られたと思わざるを得ないだろう、当たり前だ!!手当たり次第にケンカ売ってんじゃねぇよあの馬鹿野郎!!
ちくしょうちくしょうちくしょう!明日学校で会ったらボッコボコにしてやる……!!(またボッコボコにされるフラグじゃねぇから)
ああ、でもその前に、俺は今日無事に家帰れんのかな……あいつら、思いっきりボコりやがって!
も、意識がヤバい……
「あの、大丈夫ですか?」
ついに道端に膝を着いて倒れかかった俺に、話しかけてきた奴がいた。全身傷だらけで引きずるように街を歩いていても、着崩した制服で汚い髪色の俺に話しかけてくる奴は誰もいなかったのに。
誰だよ……天使か?お迎えなのか?いやまだ死にたくねーし俺、天使が迎えに来るとかフ○ンダースの犬でしか見たことねぇし。ここ日本だしお迎えじゃあねーか……
「あ、あの、僕の家すぐそこなんで、よかったら手当てしますよ」
それは天使じゃなくて、うちの制服を着た奴だった。
俺の顔を知らないってことは、同学年じゃねぇな……2年か、1年か。ちっこいし、童顔だから1年か。キノコのようなヘアスタイルに、キチンと着られた制服。明らかにクソマジメそうな野郎なのに、傷だらけの俺に話しかけてくるなんてが恐くねぇのかよ……?
「よいしょ…!う、重ッ」
重いとか言うな、俺は別にデブじゃねーぞ!てめぇが非力なだけだろ。
細い肩に背負われて、身体を半分ひきずられながら俺は運ばれていく。意外にも目的地はすぐソコだった。
「た、ただいまー…」
「遊兄ちゃん、おかえりー!!って誰ソレ!?」
「明良、救急箱持ってきてくれる?この人うちの前の道路で倒れてたの」
弟か……?なんか、普通の家にしては靴箱がたくさんあるな……それになんか、折り紙の飾りモンとかでゴチャゴチャしてる。ちょっと普通の家とは違うような。
「なんか殴られたみたいな怪我してるし、警察呼んだ方がよかったんじゃねーの!?」
「同じ学校の人だし、警察呼んだらやばい場合とかあるでしょ」
こいつなかなか分かってんじゃねーか。友達に不良とかいるのか?
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