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天使に一目惚れ
「ゆうにーちゃんおかえり!!」
「遊にーちゃん誰それ!?」
「お客さんだ!!けがしてる!!」
お、おおおおお?なんか奥から子どもがわらわら出てきたぞ……何人兄弟なんだよ?両親頑張ったな。
「あらやだ遊、その人誰!?怪我してるじゃない、救急車呼ばなきゃ!!」
お、母親か?にしては、えらく歳いってんな……ばあちゃんかな。
「梅月先生落ち着いて、とりあえず簡単に手当てしましょう」
せんせい?なんだ母親じゃねーのか……ってココどこだよ、小学校か?幼稚園か?
「遊兄ちゃん、救急箱持ってきたぜー!」
「ありがと、明良」
此処がどこか分からぬまま玄関先に下ろされて、血を拭かれてガーゼや絆創膏をぺたぺた貼られた。痛みがやっと落ち着いてきて、俺はやっと俺を担いで来てくれた奴の顔をマジマジと見た。とりあえず後日に礼を言う為に顔だけは覚えてやらねーと……それと、特別に俺の舎弟にしてやろうかな、なんて。
「!!?」
「あ、大丈夫ですか?歩けそうですか?」
「……て、天使……!?」
「はい?僕は、梅月遊といいますけど」
「ユウ、ちゃん…?…」
「ゆうちゃん?僕、男ですけど」
俺を助けてくれたのは、うちの学校の制服を着てるけどやっぱり天使だった。天使のように可愛い男だった。
リーンゴーンリーンゴーンパープー……と、俺の脳内で教会にあるようなデカイ鐘が雑に鳴り響き、天使が豆腐屋のようなラッパを響かせている。
な、なんだこれ……やばい、俺も男なのに……惚れちまった……ガチで!!うおおおああああああ!!!
「この人、頭だいじょうぶかな……どこか打ってるのかも」
「やっぱ救急車呼んだ方がいいんじゃねぇ?」
「うーん……」
*
「冗談は顔だけにしてくれるかい?中山クン」
「冗談じゃねぇって!!マジで可愛いんだって!!てかサラッと俺をディスるのはやめろ!!」
数日後、回復した俺はめでたく登校した。天使の館……じゃねぇ、遊ちゃんの家にお世話になったのはあの夜だけ。その後は親に電話して、迎えにきてもらいましたよ。次の日ちゃんと病院にも行ったし……。
天使の館は小学校でも幼稚園でもなく、梅月園という養護施設で俺には縁の無いモノだった。あのガキたちも、ユウちゃんも親がいない子どもらしい。
「可愛いっつったって男でしょーが。目ぇ腐っちゃったの?それか殴られどころが悪くて頭イカレちゃったの?ん?」
「溝内お前ひっでぇな!!一体この俺を何だと思ってんだよっ!!」
「俺達3年不良軍団のボス、中山久志クンでしょ?」
「お、おうよ……」
俺、中山久志 の片腕である溝内稜介 に、瀕死の俺を助けてくれた天使のことを語ったのだが、案の定馬鹿にされた。こいつもユウちゃんを見ればあまりの可愛さにそんなこと言えなくなるぜちくしょうが!!
「なになに、何のハナシー!?」
溝内ラブのウザギャル、舞 が俺たちのところにやってきた。いつもこういうけばけばしい女ばっか見てるから、余計ユウちゃんが可愛くて清純な感じに見えるんだろうな。
「中山クンに春が来たんだってさ」
「え!?ついに彼女できたのなかやん!!」
「ついに、ゆうな!別に俺は彼女いない歴年齢じゃねぇぞ!!童貞でもねぇし!」
「で、誰!?誰なの!?どんな子?このクラス……なわけないよねぇー!」
いっぺん泣かしてやろうか、このウザ女!!どいつもこいつも、本当に俺をボスだと思ってんのかよ!!
「ていうか3年のワケないよね。他校の子?それか変わった趣味のお姉さんとか?」
「わけないって言うなや!!一応校内にいるわ!!今から連れてきてやっから集合しとけ!そしてユウちゃんの可愛さの前に跪け!!」
「はあ?何それそんなに可愛いの?」
「くっくっく……」
「りょうちゃん何笑ってんの!?」
ちくしょう溝内のやつ、ユウちゃんが男だからって完全に馬鹿にしてんな……ユウちゃんは男でも女より可愛いんだぞ!!舞なんか、あの清純な可愛さの前じゃぐうの音も出ねぇだろうな!!
さて、1年……げっ、何組か聞くの忘れた。
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