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天使をお迎え
「ウメ、なんとかユウ……?1年にはいないと思いますけど」
「マジか。じゃあ2年か?」
「2年生まで把握してませんよぉっ」
とりあえず知り合いの1年にユウちゃんのことを聞いてみたが、心当たりがないと言われた。ユウちゃん、童顔だから絶対1年だと思ったのに……てことは2年なのかぁ?ケッ、2年の廊下なんか歩くだけでもけったくそ悪ィぜ!
ていうか!!
ユウちゃんの可愛さに忘れてたけど、俺、犬神を一発殴ってやんなきゃ気がすまねーんじゃねーか!!アイツのせいで知らない連中にボコボコにされて……でも、ボコボコにされたおかげでユウちゃんに会えたのか……でもムカつくもんはムカつくから殴ったるぅぅぅ!!!
俺は、犬神のいる2年4組へ行った。授業中?んなもんかまうか!!
「犬神写楽ぅぅぅッッッ!!ちょっとツラ貸せやコラぁぁぁ!!」
シーン……
2年4組はもぬけの殻で、無人の机には服が散乱していた。
「体育かよ!!!」
くそッ、一人ノリツッコミみたいなことしちまった!こうなりゃ休み時間になるまで待って……いやあの野郎を待つのはなんかムカつくな。やっぱり先にユウちゃんを探そう!
でも授業中か……くそーッッ!!さすがにマジメっぽいユウちゃんを授業中に呼び出すわけにはいかねーし、昼休みに出直すか……。
*
そして、昼休みになった。
「で、結局見つかったのかね天使のユウちゃんは」
「うるっせ、今から探しに行くんだよ!!」
「中山クン、さっきは何しに行ったの?」
「うるせぇぇ!!今度こそ待ってろよ!!絶対ぇ連れてくるからな!!」
くっそ、溝内のやつ!ちょっとイケメンだからって調子にのりやがってぇぇ!!……まあいい、もう少しで奴をギャフンと言わせることができるんだ!
ユウちゃん、何クラスかな~。2年の知り合いなんて、知り合いっつーか知ってるのは犬神しかいねぇけど、あんな生意気な奴には絶対に聞かねぇぞ!ていうか会ったらまず殴ってやるからな!!
「お、おい中山先輩だぞ」
「なんで2年の廊下に来てるんだ?」
「犬神の奴がまたケンカ売ったのか?」
ふっ、1年は俺を知らない奴が結構いるが、さすがに2年は俺のことを知っていやがるな!でもユウちゃんは俺のこと知らなかったけど。
ま、まあいい!これからたっぷり知ってもらうんだ!2年は大嫌いだけどユウちゃんは特別だからな……!!
「あれ……久志くん?」
この、可愛らしい声は……
「ユウちゃん!!」
俺の天使、いたぁぁぁぁ!!!トイレから降臨したぁぁぁぁ!!!!
「もう怪我はいいの?」
背景にお花を飛ばしながらトテテ、と小動物のように駆け寄ってくるユウちゃん。ああ……やっぱり可愛いな、抱きしめてぇ!!
ちなみに久志くん、と名前で呼ばせているのは勿論俺!梅月園で自己紹介したときにそう呼ぶように頼んだ。先輩だけど『中山さん』じゃちょっと遠すぎる感じがして悲しいし……3年だってことも言ってないから、タメ口だって構わないんだ、ユウちゃんなら。
「ちょッ、ウメボシのやつ何で中山先輩にタメ口きいてんだ!?」
「つうか久志くんって呼んだぞ……!!」
「あいつ確か犬神とも仲良かったよな!?」
「な、なんかヤべェ臭いがするぜ……犬神、このこと知ってんのかな?」
「誰か4組に行ってこいよ」
「え、ええー俺やだ……」
「おい、ウメボシ連れてかれちまったぞ!やばくねマジで!?人質なんじゃ……!」
フッフッフ……遊ちゃんの可愛さの前では野次も小鳥のさえずりにしか聞こえねぇぜ!
「あ、あの久志くん、用ってすぐ終わる?僕お弁当教室に置いてきちゃったんだけど……」
「すぐすぐ、5分で終わるから!」
「んー、それなら」
天使、ゲットだぜ――!!!
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