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遊と華乃子①
今朝目が覚めたとき、すごく腰が重くて痛くて立ち上がることすらできなかったけど、やっとベッドから起き上がることができた。とってもヨロヨロだけど……。
現在、午前9時。
とりあえず、軽く身体を拭いて作務依と割烹着を着た。写楽は昼には帰ってくるって言ったから、それまでは大人しくこの家で待ってることにした。
どうせこんな時間じゃ園に帰ることもできないし……学校サボったの!?って梅月先生に怒られるから。
写楽は華乃子ちゃんと遊べって言ったけど、どこにいるかわかんないし……とりあえず、何か雑用させてもらおうかな。
そう思っていたら、ドアがノックされた。
「は、ハイッ!」
シズネさんかな!?僕が居ることを知ってるんだよね!?
「遊、入りますよ」
「は、はいっ!どうぞ……!」
お、怒られる……!?平日なのに遅くまで寝てて、あまつさえ何で学校サボってるんだって……ひええ……やっぱり写楽におぶってもらってでも学校行けばよかった!いや、ご主人様におぶってもらうとか恐れ多いな、僕。
「さ、華乃子様」
「え?」
シズネさんはぐるぐるしている僕を怒ることもなく――その後ろから、ひょっこりと華乃子ちゃんが姿を見せた。
「写楽様から、貴方が午前中華乃子様の遊び相手をしてくださると聞いています」
「あ、ハイ」
でも華乃子ちゃん、僕に全っ然懐いてないけどいいのかな……?写楽と伊織くんの四人では何度か遊んだけど、華乃子ちゃんはいつも写楽にべったりなんだ。伊織くんは僕の方に来てくれるけど。すると、シズネさんが言った。
「伊織様は午前中ずっと勉強とお稽古をされますので、いつもはその間、華乃子様は私や絢実などがお相手をしているのですが、今日はせっかく写楽様からのお申し出なのでお願いしてもよろしいですか?華乃子様とは何度か遊んだことはおありですよね」
「は、はい」
全然懐かれてないですけどね……。
華乃子ちゃんはシズネさんの割烹着の裾を握りしめて、ジッと僕を睨んでいる。
僕はゴクッと唾を飲み込んだあと、二人にバレないようにすうっと深呼吸をして、とっておきの笑顔とともに華乃子ちゃんに言った。
「華乃子ちゃん、ゆうといっしょにあそぼうね!」
「………」
む、無言&無表情……。そ、そうだよね、あんなイケメンなお兄ちゃんがいるのに僕みたいなのに興味持つハズないよね……女の子って何歳からイケメンが好きなのかなぁ。
「……では、華乃子様をよろしくお願いしますね、遊」
「ハイ……」
よろしくお願いされて大丈夫なんだろうか……僕。
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