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告白
「あ、ぁあ、なん……」
「ん…?」
遊が、「いれて」以外のことを言い出したので、俺は思わず耳を傾けた。遊は焦点の合ってない目で俺を見つめ、必死に手を伸ばしてくる。
「なん……で、こんな、やさしくするの、なん……で」
なんで?
何で今更、そんな分かりきった質問するんだよ。そんなの、
「お前が好きだからに決まってんだろ!」
「………え?」
あ
あれ?
涙を流していた遊の表情が、一瞬真顔になった。それを見て俺も、色んなことが頭をよぎった。
『好きだ』って。自分の気持ちを素直に遊に伝えることなんか絶対に無い、そんなハードルの高いこと出来やしないと思っていたのに。俺は下唇を噛みしめて、後から怒涛のように襲ってくる動揺を必死で殺そうとした。
……けど。
「~~~ッ……!!?」
これ以上無いってくらい真っ赤になって、俺以上に激しく動揺している遊の顔を見たら、なんだか逆に冷静になってきた。
「……挿れるぞ」
「あっ!?」
予告と同時に俺のモノを遊の後孔に宛がって、返事も待たずに奥の奥までズブブブ……とゆっくりと突っ込んだ。俺自身ももう我慢の限界だったらしく、挿れただけで気持ち良すぎて、余裕なんか無いとばかりに律動を開始した。
「あっ……ひあぁッ!!あッ!あぁっ!そこっ!そこぉっ!」
遊は、待ってましたとばかりに歓喜の声をあげる。
「あっ?ここ、かよッ……!」
「いいっ!いいよぉっ……あ、ああーっ!!」
たった数回の出し入れで、遊はまた精液を飛ばした。遊のソレは、イキすぎて色も粘度も殆どなくなっている。
「イクの早ぇよッ……くそ……!」
最後までスローセックスしようと思ってたのに、気持ちよすぎて腰が全然止まらなかった。しょうがない、遊の身体が気持ち良すぎるのが悪いんだ。
俺は自分にそう言い聞かせて、一度深呼吸をするとまた遊のナカをガツンガツンと激しく突いた。遊は、挿れてからも何回イッたか分からないくらいシーツも自分自身もドロドロにしている。
俺は遊の意識を飛ばさないように、抱きしめて耳元で囁いた。
「好きだっ……!好きだ、お前が好きだ……!!」
一度言ったら、二度も三度も同じだろ。
「ひあっあ、や、写楽、写楽ぅっ……!」
遊は悶えながら顔を真っ赤にして、これ以上無いってくらいに感じまくっている。俺が好きだって言うたびに、俺のチンポをきゅうきゅうと締め付けて反応した。
何故だろう、好きだって言いながら抱くといつもより気持ちいい気がする。ヤッてることは、普段と変わらないのに。
身体だけじゃなくて、もっと別のものを一緒に感じている気がする……。
俺も遊のナカで何回もイッて、遊を抱きしめながらその身体の上に倒れ込んだ。息を整えながら遊の顔を見ると、やはり息は荒かったけど顔はまだ赤いままで、俺の言葉を反芻してるようだった。
「………」
冷静になって思い返すと、やっぱり告白は恥ずかしい。
でも、あんなに素直に俺に好きだって言える遊がこんなに照れるのっておかしくないか?
あ、そうだコイツ、恥ずかしさの基準が他人とは違うんだったな。俺は、初めて屋上で遊のモノをしごいた時のことを思い出した。
やっぱり自分よりテンパってる奴を見ると、こっちは少し冷静になれるようだ。
「……おい遊、こっち見ろよ」
「……むり……」
「あぁ?」
「今、写楽の顔見れない……」
向き合って寝ているのに、絶対に目を合わそうとしない遊。その表情は処女みたいに清らかで、今までアンアンといやらしい声を上げてよがっていた奴とは本当に別人のようだった。
俺は両手で遊の顔を挟んで、無理矢理顔を俺の目の前に寄せた。一瞬だけ目が合ったけど、遊はきゅっと目を瞑った。
この姿勢とタイミングで目ぇ閉じるとか……キス待ちしてるようにしか見えねぇよ?
俺は、誘われるままに遊に口づけた。
そしてもう一度、
「……遊、好きだ」
遊に告白した。
「………っっ」
……本当はずっと言いたかった。他の誰よりも先に、一番最初に伝えたかった。けど、言えなかった。恥ずかしいのと、遊に拒絶されるのが恐くて。
でも、今は……
たとえ拒絶されたって、俺は遊を絶対に離さないと決めたから。どんなに壮絶な過去があったって、そんなの俺には関係ない。
「俺はお前が好きだよ、遊」
一生、死ぬまでコイツは俺が守ってやるって、そう決めたんだ。
「……ぅっ……」
「泣いてんじゃねーよ、馬鹿」
ふと胸が詰まるような、何かがこみ上げてくるような不思議な感覚がした。そしてだんだんぼんやりと、俺の視界の中の遊が少しずつ歪んでいく。
「……写楽……?……ンッ」
遊に見られたくなくて、俺はもう一度遊にキスをした。
その拍子にぽろりと一つだけ俺の頬を伝っていったのは、何年か振りに出た俺の涙だった。
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