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休日の誘い

* 「今日、泊まってくだろ?」 「……え?」 「明日も休みだし、どうせお前明日も来る気だっただろ」 「うん」  今日は祝日だった。明日は振り替え休日だから学校はまた休みだ。 写楽の家でのバイトは土日と祝日は休みだけど、僕が来たいから来てるんだ。こんなに毎日来てもいいのかなと思うけど、写楽と双子ちゃんとシズネさん以外の人とはほとんど会わないから、あまり気にしなくなった。 「あ、クソモヒカンからメール……お前も来たか?」 「来てる。……わあ、明日遊ぼうって!」  写楽は僕に仕事用として与えてくれたケータイを好きに使わせてくれている。スマートフォンじゃなくて良かった、あんな難しそうなの僕には使えないし。 「面倒くせぇ……」 「僕遊びたいな。宮田くんたちがどんな遊びしてるのか知りたい」 「別に、ゲーセン行ってカラオケだろ。それかボーリング」 「……僕、どれも行ったことない」  僕の言葉に、写楽は目を丸くした。 「……マジ?ボーリングとか小学校でも中学校でもクラス会とかで行かねぇ?」 「誘われたことないから行ったことないよ」 「……んじゃ、行くか」 「うんっ!」  なんか、すごーく不憫な目で見られたのは気のせいなんかじゃないよね……。  クラス会でのボーリングは親も一緒に参加が必須だったから、親のいない僕は誘われないのは気を使ってもらっていたんだと思ってるんだけど。でも、楽しみだな。学校以外で宮田君たちと会うなんて初めてだ。 「あ、じゃあ帰った方がいい?服とか……」 「下は今日着てきたヤツでいいだろ。あとは俺の貸してやる」 「ええっ!?」  身長とか違いすぎるんですけど!僕が着れるような写楽の服、あるのかな? *  そして、迎えた次の日。写楽は僕に貸してくれるという服をクローゼットから数着出してきた。 「こ、こんな高そうな服、借りれないよ!僕やっぱり昨日着てきたヤツでいい」  手触りが!Tシャツの手触りが僕の知ってるTシャツじゃない!カーディガンも僕の知ってるカーディガンじゃない。毛玉なんて一つもないし、もしかしなくても新品だよねコレ? 「もう洗濯しちまったから、あきらめろ。何が不満なんだよ」 「不満とかそんなんじゃなくて、もし汚したり破っちゃったりしたら!」 「気にすんな、給料から天引きだ」 「やだあああーっっ!!」  僕の大事なバイト代が!!服を買うくらいならおやつを買いたいよ!!それか新しいフライパンとかお弁当箱とか! 「冗談だっつーの……そんなに叫ぶほど嫌なのかよ」 「そ、そういえば今日いくら必要なの?ボーリングって何円かかるの!?」 「金の心配はすんな。お前、誰のペットなんだよ」 ん? 「……いや……さすがにそれは、だめでしょ」 「なんでだよ」  お友達と遊びに行くのに。宮田くんたちは僕たちの関係知らないのに。主人とペットってのは多分冗談だと思ってるよね? 「いや、何ででもだよ……だって、払ってもらう理由ない」 「あぁ?ご主人様とペットの関係でいたいっつったのは誰だよ。じゃあ恋人になるか?」 「こ、コイビトになったら写楽に払わせない?」 「馬鹿か。なおさら俺が出すわ」 「ええーっっ!?」  どっちにしろ写楽が出すってことじゃないか!っていうか、さすがの僕でもそんなひどい理由で恋人にはならないよ……。 「気にすんなって。さっさと着ねぇと風邪引くぞ」 「へぶちん!……うん……」  言われたそばからくしゃみが出た。そういえば僕、上半身下着一枚だった。でも大丈夫、僕は寒さには強いんです。風邪とか引いたことないです。頭が悪いからでしょうか? 「ニット帽とか被るか?」 「もう被せてるね」 「お、似合う。可愛いじゃねぇか」 「ッ……」  真顔で可愛いって言われるのも、『好き』って言われるくらいドキドキする。

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