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初めてのボーリング

「わぁー……!」 僕たちはボーリングだけじゃない、複合施設みたいなところに来た。すごい、初めてのボーリング場……!音楽と、人の声と、カーンッという音が入り交じってる。とても騒がしくて、心臓がドキドキした。 「遊、靴のサイズは?」 「24センチだよ。なんで?」 「何でって、シューズレンタルだから。……足ちっせーなお前」 「梅月園じゃ一番大きいんだからね!」 「他はガキばっかじゃねーかよ」 ボーリングって靴とか貸してくれるんだ。専用の靴があるのも知らなかったけど。 「ボールも、そこらへんのが一番軽いから」 「か、軽くなくても大丈夫だし……」 「ウソつけ。ほら、7ポンド」 写楽は僕にピンク色のボールをずしっと渡してきた。なんか、子どもか女の子が使うやうみたいなんだけど……でも7ポンドでこの重さなのか。ふふ、なんかわくわくしてきた! 「写楽さーん!名前勝手に書きますよー?」 「貸せっ」 宮田くんの声に、写楽は急いで受付へ行った。名前って、誰が書いてもいいんじゃないのかな? そして電光パネルに映し出された名前は、二つのレーンに分かれて表示された。 遊 写楽 クソモヒカン クソハゲ クソキンパ クソピアス 「「「「……………」」」」 な、なるほど。書いた名前がそのまま出る仕組みなんだね……!写楽、せめて『クソ』は取ってあげられなかったのかな……? 「「「「(予想はしてましたけどね)」」」」 それにしても…… 「僕と写楽だけこっちのレーン使っていいの?せっかく6人なんだから3人ずつ分けたらよかったのに」 「あいつら仲良しだから、引き離すのは可哀想だろ」 「そっか、それもそうだね!」 「「「「(遊ちゃん、騙されてる!!でもあの二人の中に入ろうとは思わない!!)」」」」 「あああああ――っっ!!」 突然、隣のレーンから雄叫びが聞こえてきて何事だ!?と思って見たら、そこには僕らと同じ高校生らしい人達がいた。 っていうか、 「久志くん!?」 つい名前で呼んだあと、あっと口元を押さえた。名前で呼ぶの、禁止されてたんだった! 中山先輩、中山先輩っと……頭の中でも、切り替えなくちゃ!それにしても、こんなところで会うなんて偶然だなぁ。 「ユウちゃんーっっ!こんなところで会えるなんてやっぱ俺達運命なんだねー!!」 「じゃー俺とも運命だな、中山」 中山先輩が僕に近づいてきたけど、写楽が僕の前に立ちふさがった。 「てめぇじゃねぇよ!どけ!犬神!!俺とユウちゃんの感動の再会に水さすんじゃねえよ!!」 「誰がどくか色ボケ野郎!!てめぇこそ俺と遊が二人でボーリングしようとしてるところに水差すんじゃねぇ!!」 え、ふたり?6人で遊ぶんだよね?? 気付けば、僕の周りには宮田君たちが固まっていて、中山先輩の周りには3年生が固まっていた。 なんか今にも乱闘が始まりそうな雰囲気なんだけど……?お店の人がめっちゃ不審げな顔してこっち見てるよ!!なんか電話持ってるけど、警察に電話しようとしてるんじゃ。 すると。 「まあまあ中山クン、こんなところで憎き犬神写楽と会ったのも何かの縁。ここはひとつ、そこのペットくんを賭けてボーリングで勝負でもしたら?」 「ええっ!?」 あの人は……名前は忘れたけど、確か中山先輩と一番仲良さそうだったイケメンの人だ。 って、僕が賭けの対象!?僕を賭けたところで、何か二人にお得なことがあるの!? だって中山先輩が僕を好きだとかいうのは 写楽の勘違いだし。前に『本気だったらどうする?』って言われたけど、それはあくまで仮定の話だから、僕は真に受けていない。

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