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遊の変化①

 数日前から、遊の態度が少しおかしい。クソモヒカン達と遊んだ次の日くらいからだ。  表面上は特に変わったところはないけど、急に話しかけた瞬間少しビクッとする。今までそんなことは一度もなかったのに……。  ただ俺を意識してるってだけなら嬉しいけど、どうもそんな感じじゃないし、何かあったのか……?  かと言って、遊は真正面から尋ねたところで言いにくいことを素直に教えてくれるようなヤツじゃない。全部自分で抱え込もうとするところが本当に厄介だ。  って、人のコト言えたもんじゃねぇけどな、俺も。  見た目は全然違うのに、性格は似てるとか本当に俺たちは二人して厄介だ。でも、このままにしておくわけにはいかない。  遊んだ後に変わったということは、俺の家で何かあったのには違いないということだ。でもあの日、俺の知る限りでは遊は弁当を作ってくれただけなんだけど……。  小山さんに嫌味言われたとか?  いや、そんなこと言う人じゃないしな、あのおっさん。遊のこと、えらく手際がいいって褒めてたし……小山さんに訊いてみるかな。でも、なんか探ってるみたいでそれも微妙か。 「写楽、帰らないの?」 「あ?……いや、帰るけど……」  ずっと考え事をしてたら、いつの間にか遊が俺のクラスに来ていた。俺の周りにはクソ舎弟どもも居て、じっと俺の様子を伺っていた。 「………」  無言でクソモヒカンを睨んだら、 「写楽さんが考え事をしてるようだったので声をかけるのは控えさせてもらいました!!」  だと。いや、声かけろよ。何全員でじっと待ってんだよ、気持ち悪い奴らだな。 「写楽さんたちまっすぐ帰るんスか!?俺たち今からマックの新作バーガー食べに行くんスけど、一緒に行きません!?」 「あー?……遊、食いたいか?」 「え、食べたくないかそうじゃないかって言われたら食べたいけど……」  でも無駄遣いはしたくないな、って続くんだよな、コイツの場合。 「……じゃ、行くか」 「え」 「ペットが食いてーって言ってんだから、ご主人様として食べさせてやんなきゃいけねーだろ」  そう言ったら顔を赤くして嬉しそうに笑った。いつもと何も変わらない遊。俺の考え過ぎだろうか……? 「最近の写楽さん、ほんとに遊ちゃん中心で動いてるよな……」 「シッ、そんなの前からだろうが……!」  クソ共の会話は無視することにした。  放課後にマック食べて、学校のつまらない話題で盛り上がって、(俺と遊はほぼ聞いてるだけだけど)店員とか他の客に『不良よ、いやぁね』ってな顔で敬遠されて……いつの間にか、これが俺の日常だ。  いつから、こうだったっけ……?別に嫌なわけじゃない、それなりに楽しいし。特に、遊と出逢ってからは……。 「写楽、口元マヨネーズ付いてるよ」 「ん?」 「ふふ、ハンバーガーって食べるの難しいもんね……はいっ、とれたよ」 「……サンキュ」  遊が紙ナプキンで口元を拭ってくれた。  マックを食べるのが難しいのは遊だけだと思う。口とかかなり小さいしな。俺はこういう庶民の食べ物に単に食べ慣れてないだけだ。 「「「「…………」」」」 「……何見てんだよお前ら」 「「「「い、いいえ!!俺たちは何も見てません!!」」」」 「なんでそんな嘘吐くんだよ」  最近はこいつらもおかしい……    って、元々だった。 * 「お帰りなさいませ、写楽ぼっちゃん、遊」 「ただいま」 「ただいま帰りました!」  遊は俺の家にはただバイトで来てるだけだが、シズネがいつも「お帰り」って言うから最初は戸惑っていたけど今は自然に「ただいま」って言うようになった。  嬉しそうにそう言うこいつの顔も、俺は好きだ。

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