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恋人宣言してみた
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佐藤と梅月先生の話は10分程度で終わったらしく、佐藤は授業があるから学校に戻り、遊の病室には俺と梅月先生と寝ている遊の三人になった。
そして17時をまわったところで、梅月先生がそわそわしだした。
「……梅月先生、あいつらが家で待ってるんじゃないんですか?」
「ええ、そうなんだけど、でも……」
「……帰ってあげてください。遊には俺がついてますから。俺は遊の目が覚めるまでここにいるつもりです。でも、あいつらには梅月先生しかいないだろ?」
きっとあのうるさいガキどもは、腹を空かせて先生の帰りを待っているだろう。
「前にも、貴方にはそうさせたことがあったわ……あの時も私、自分のこと保護者失格だなって思ったの。一晩ほったらかして、遊に愛想つかされてもしょうがないなって」
「先生の身体は一つしかないんだからしょうがないですよ。それは遊だって分かってる。だからそんなに自分を責めないでください」
「貴方は優しいわね、写楽くん。遊が好きになるはずよね……」
「………」
そういえば、梅月先生は俺と遊の関係を知ってるんだろうか。なんとなく勘付いてはいるんだろうけど、男同士なのになんとも思わないんだろうか……。
「ねえ、二人は友達なんかじゃなくて、本当は……」
「恋人です」
ペットと飼い主だなんて言ったらまた腰抜かしそうだし、近い将来は恋人になる予定だからそう言った。
「ふふ、それを聞いて安心しました。じゃあ写楽くん、遊の目が覚めたら連絡してくれる?来るのは明日の朝になっちゃうと思うけど……きっと一晩中起きてるから」
「分かりました。でも、できれば寝ててください」
「それはこっちも言いたいわ。……ねえ、貴方はご両親に電話したの?」
そういえば、俺のことは何も詳しく話してないんだっけ。
「これから連絡します。俺の場合、普通に帰らない日もあるからそこまで心配はされません。それに……俺の俺の親は生きているけど、とうの昔に見捨てられてるんで。そこは遊と同じなんです」
「え……」
「でも、遊にとっての梅月先生のような存在が、俺にもいてくれるから」
だから、大丈夫。
そして、俺は梅月先生を病室から見送った。外を眺めながら自宅に電話し、シズネに今日は帰らない旨を伝えた。シズネは事務的に『分かりました、お気を付けて』と答えた。
それでいい。俺はもうシズネに、それ以上のものを求めたりはしていないから。
『……あ、そうです写楽坊ちゃま』
「何?」
『何故か坊ちゃまのご学友が遊の通学鞄をうちに届けてくださったので、明日学校に行く前に取りに来てもらえますか?赤い髪のモヒカンヘアーでした』
「あー……分かった」
クソモヒカン、あの野郎。絶対うちを見たかっただけだろ……。
『華乃子様がモヒカンヘアーの姿を見たらしく、恐がって泣いておられました』
「分かった、明日殴っとく」
『では、お気をつけて』
通話を切った向こうで、華乃子の泣きわめく声が聞こえた。少し心配だけどシズネがいるから大丈夫だろう。
俺は遊の側に行き、またその手を握った。
「遊……」
すると、固く閉じられたままだった遊の瞼が突然ピクピクと動き出した。
「……遊!?」
呼びかけても目を覚まさない。何か恐い夢にでも魘されているようだった。
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