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恋人達とイルミネーション
公園に近付くに連れて、人の数も多くなってきた。勿論、目につくのはカップルばかりで世の中カップルだらけかよって思った。家族連れもちらほらいるけど、カップル勢が圧倒的だ。
しかも全員、周りのことはおかまいなしにラブラブしまくっている。独りで居たら相当イラつきそうだけど、今は俺も遊と一緒にいるからまあいいかっていうか……そんな感じだ。
男同士もいるっちゃいるし……ダチか恋人かはわからないけど。ちなみに遊はどっから見ても女枠だ。チビだし、なんかモコモコしてるから。
「……っくしゅ!」
「お前、そんだけ着てても寒ィのかよ?」
「そりゃあ冬だから寒いよ。右手だけはあったかいけど……」
右手は、俺が握ってる方だ。
「……左と交代するか?」
「ううん、写楽が右に居る方が落ち着くから」
「ふーん」
いつも可愛いと思ってるけど、いつもより可愛く見えるのはクリスマスイヴのマジックなんだろうな……絶対。
近くに自販機があったから、何か温かいものを買ってやることにした。
「遊、何が飲みたい」
「あ……じゃあココア、かな」
「ん」
最初は俺が奢ることに遠慮してたけど、もう無駄なことだと気付いたのか、遊はその他のことで返そうと思ってるようだ。弁当とか、弁当とかな。
自分にはブラックコーヒーを買って、遊にココアを手渡した。
「ほら」
「ありがとう」
イルミネーションまではもうすぐだ。人ごみに逸れないように、しっかりと手をつなぎ直した。広い公園はメインのイルミネーションのある途中の道も電飾で飾り立てられていて、遊はそれらを目にするたびに「わあ!」とか「きれい!」とか感嘆の声を上げるから、近くにいたカップルの彼女の方に「あの子すごい可愛い~」と言われていた。
俺は最初は恥ずかしかったけど、「君の方が可愛いよ」とか彼女に言う男の方がよっぽど恥ずかしかったからなんか冷静になれた(言われてた彼女はシラケてた)。それに、遊が可愛いのは事実だしな。
そして。
「わあー……!!」
今朝テレビでも特集されていた、ここいらでは一番デカくて派手なイルミネーションが現れた。遊は感動のあまり言葉を失ったみたいだ。
俺はイルミネーションなんかどうでもよくて、遊の反応の方がひたすらに面白いから遊の方ばっかり見てしまう。
「……感動してんの?」
「うん……うんっ!!」
「単純な奴。この人ごみの方がよっぽど印象に残るぞ、俺は」
もちろん嘘だ。俺の印象に残るのは、嬉しそうな遊の顔。
「写楽……ありがとう、連れてきてくれて」
「別に、クリスマスだし」
「ほんとにすごく嬉しいよ……大好き!」
「ブッ!……」
大好き、だけをでかい声で言うから俺は思わずコーヒーを噴きだした。
「お、お前なぁ!」
「え?」
好きだとか愛してるとか、俺も言ったけど!でもそれはセックスの最中とか気持ちが高ぶった時だけであって!!
当然周りは人だらけだから、遊のデカい告白を聞いてクスクス笑われてる。周りを気にしないのは遊の長所でもあるけど、一緒に居る俺はこういう時はたまらなく恥ずかしくなる。
「笑われちゃった」
「そりゃ、笑うだろ」
「でも、僕が写楽を好きなのは事実だし」
「お前はもう黙って感動しとけ」
そう言って、遊のニット帽をぐいっと目の下まで下ろすと、遊は「これじゃ見えないよぉ」と、クスクス笑った。
この雰囲気の中でロマンティックにキスしたかったのに、なんかやる気が削がれたな……。
……まあ、いいか。
俺的には、イルミネーションよりもっといいものが見れたし。
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