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クリスマスの朝

適当に自分と遊の身体を拭いて、バスタオルに包んだままベッドへと寝かせた。俺はミネラルウォーターを口に含むと、遊の頭を持ち上げて口移しで呑ませた。 「けほっ……」 「もっと飲め」 「ん……もっとちょうだい……」 その言い方がなんだかエロくって、介抱しているのにまた下半身が疼いた。まあ、一度出しただけで治まるわけないんだよな、若いから。 でもとにかく今は、のぼせた遊の身体を冷ますことが先だ。そのあとはもう一回、今度は風呂じゃなくて俺にのぼせさせるから。 「……しゃらくぅ……」 「ん?」 遊はぼんやりとした顔で、俺に手を伸ばしている。 「抱っこして」 「はいはい」 なんだこいつ、可愛い……一丁前に俺に命令とかしやがって、どっちがご主人様なんだよ。まあ別に俺はもうどっちでもいいんだけどな。 俺は遊を抱き起して膝に乗せると、軽く抱きしめた。そしたら耳元で「くふっ」って笑う声が聞こえた。 「何だ、もう元気になったのかよ?」 「最初から元気だもん……」 「さっきまで湯あたりしてただろうが」 「してないよー」 何でこんな分かりやすい嘘つくかな。いつも素直な遊がたまにこういうことを言うのは俺に甘えているってこと、もう知ってるけど。 「じゃあ、もっかい熱くしていいかよ?」 「うん、いっぱいして……?平気だから」 もっと俺にエロいことをシてほしくてわかりやすい嘘を付く、赤い顔に上目使いで俺を誘う、そんな遊が可愛くてたまらなくて……今度は優しくしようとしていた俺の理性は、一瞬でどっかに飛んでった。 そしてその後も俺たちは『好き』と『愛してる』を繰り返しながら互いを激しく求めあって、気付けばお互い気絶するように眠っていた。 * 今日は目が覚めれば、恋人が隣に居る世界一幸せなクリスマスの朝…… の、はずだった。 しかし俺を起こしたのは朝を告げる恋人の甘い声なんかじゃなくって、内線電話だった。 プルルル…… 「あぁ……?」 俺に内線を掛けてくるのはシズネしかいない。今の時刻はまだ8時半で、朝方まで遊とセックスしていたから自分があまり寝ていないことを知った。 今日から冬休みなのに、俺シズネに言ってなかったか?それでも内線で起こされたことなんて、今まで一度も無かったのに。 「もしもし?なんだよシズネ」 わざと不機嫌丸出しな言い方をする。いつもと違う朝に少しだけ変な緊張感があって、それを誤魔化すためでもあった。 『坊ちゃま、今すぐ服を着てくださいませ!』 「は?」 シズネの声は激しく焦っている。こんな動揺した声は初めて聴いた。思わずボヤ騒ぎか何かがあったのかと思った。 何で俺が裸だって知ってんだ、と突っ込む間もなく…… 『先程旦那様が帰って来られて、今坊ちゃまの部屋に向かってらっしゃいます!』 「え……?」  俺が返事をしながら自分の部屋をドアを振り返ったのと、そのドアが開かれたのはほぼ同時だった。 「……はっ……マジかよ」  そこには二年ぶりかそこらに会う、大嫌いなオヤジとその側近の姿があった。

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