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何気ない疑問

* 「……悪い、無茶させたか?」 「全然。大丈夫だよ」  お風呂でのやや激しめなセックスを終えたあと、僕たちはシャワーで身体を洗い流して今はベッドで2人、ごろごろしている。部屋のベッドはシングルが二つ付いていたけど、勿論二人で一つを共有していた。……寒いから、っていうのもあるし。  ギュウ………  突然、なんだかまた不安になってきて僕は写楽の腕に抱きついた。 「……遊?なんだよ」 「離れたくないよ……」 「はぁ?離れねぇよ馬鹿」 「………」  写楽はそう言ってくれるけど、正直僕は不安で堪らないんだと思う。だって、どうしたらこれからもずっと一緒に居られるのか、その方法が全然分からないんだ……。  性転換するとか、そういうことじゃないよね、きっと。なんかシンデレラからは離れる気がするし……。 「写楽、もし僕が女の子だったら嬉しい?」 「はあ?」 「何でもないです……」  馬鹿なことを聞いてしまった、恥ずかしい。 「俺はお前が男でも女でも好きな気持ちは変わらねぇけど、俺が好きになったのは女じゃなくて、男のお前だからな」 「っ……!」  単なる思い付きで言ったのに、まさかこんな返答が来るなんて思いもしなかった。 「つーか女だったらまずペットになんてしねぇよ、面倒くせぇし……」 「男ならいいの?」 「いや、……他に思いつかなかったんだよ!傍に置いとくのに舎弟にするにはお前ケンカ弱そうだし、かと言っていきなりダチってのも変だし!!」 「……どうして僕を傍に置いてくれる気になったの?」  僕はずっと疑問だった。学年一の問題児と名高いきみが、どうして目立たなくて平凡な僕をペットとして傍に置いてくれるようになったのか……。 すると写楽は少し困った顔をして、目を細めて僕を見つめた。 「……そんなの、理由なんかねぇよ」 「え?」 「俺だって分かんねぇし。何でお前を自分の傍に置きたいって思ったのか……」 「そう……だよね」 単なる彼の気まぐれってコトだ。当たり前だよね、普通男をペットにしたいだなんて思わないもん。でもその気まぐれのおかげで、彼とこういう関係になれたことは僕にとって人生最大のラッキーだ。 「あー、違うそうじゃねぇ!なんつーか……お前が俺を真剣に好きだって言ったから!だから手元に置いておきたかったんだよ」 「えっ?……そうなの?」 拍子抜けだ。だってそんなの、女の子達から散々言われ慣れていただろうに。 そんな僕の疑問を感じ取ったのか、写楽は続けた。 「俺に言い寄ってくる女は、俺っつーか俺の家が目的だったり、俺の見てくれだけを好きだってのがなんとなく透けて見えてたんだよ。でも、あんなに真剣な顔で俺に告白してきたのはお前が初めてだったから……」 「………」 “君に殴られて君を嫌いになれるんだったら、僕はいくらでも君に殴られたいと思う” あれは、僕の本心から出た言葉だ。僕はきみに殴られて、出来ればきみのことを嫌いになりたかった。まあ、そんなの無理なんだけど。 それくらい、あの時もきみのことが好きでたまらなかった。 「俺自身のことをマジに好きになってくれる奴なんていないって思ってた。だからあの時はすげぇ驚いたけど……正直、嬉しかった。それまでお前のことは存在すら知らなかったけど、手放したくないって思った。だから、とりあえず傍に置いとく理由としてペットにしたんだよ」 「写楽……」 「……そんな理由じゃ、やっぱり不満か?」 「不満なわけない!だって僕、信じられないくらい嬉しかったんだよ!」 「ペットんなれって言われて?」 「うん!」 「お前、それはちょっと問題なんじゃ……」 「写楽限定だもん」 そう言ったら、写楽はプッて吹き出した。笑った顔、今日初めて見たかも。かわいい。 「……お前って本当、犬っぽいよなぁ」 そう言って、僕の頭をぐりぐりと撫でてきた。ぐりぐり?ワシャワシャ?髪の毛がぐしゃぐしゃになるけど、手の感触が気持ちいい。 「そうなの?僕、犬飼ったことないからわかんないけど」 「飼ったことあんのは金魚だっけ?」 「うん。でもお祭りで買ったやつだから一晩で死んじゃったけどね」 「お前、それは飼ったって言わねぇよ……」 「そお?」 3匹とも、名前も付けてたんだけどなぁ。忘れちゃったけど……。 「……まあ、俺もペットは飼ったことねぇけどな。お前以外」 「へへ、そうなんだ」 なんとなく、初めてな感じが嬉しい。動物と同列でも全然構わないんだ僕。 「今はもう俺の恋人だけど」 「……ハイ」 きた、不意打ち!!僕の顔は、またゆでダコみたいに赤くなった。 「……何でそこで照れるんだよ!クサイこと言った俺が恥ずかしいだろーが!!」 「だ、だって慣れないんだもん!」 もう、自分に暗示かけちゃおうかなぁ。旦那様に言われたことに凹まないように……。 僕は写楽の恋人! 僕は写楽の恋人!! だから写楽は、僕の恋人……。 「………」 「遊?」 「な、なんでもない!」 うう、やっぱり、まだ恥ずかしいや……。

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