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海から山へと
僕らはネットカフェのすぐ隣に隣接してある、ハンバーガーチェーンに入った。定番の朝メニューを選んで買って、席に座る。
「……とりあえず、今日は大阪まで行けたら行きたいけど、おまえ滋賀と三重どっちのルートから行きたい?」
「え。どっちがいいんだろ……全然わかんないよ」
「山を通るか、海を通るか。それか滋賀だったら京都経由で大阪だけど、三重だったら奈良経由……うん、目立たないように三重、奈良コースだな」
「よくわかんないけど、それでいいよ」
どっちにしろ、僕は乗ってるだけだし。三重県を通るってことは海が見れるのかな?それは少し、楽しみだな。
「せっかくの名古屋なのに、何も観光とかできなくて悪ィな」
「そんなのいいよ、また来ればいいんだし」
「それもそーか」
僕の言葉に、写楽はふっと笑った。そんなこと気にしなくっても、別に僕は観光とかそこまで興味ないし。お寺とかお城とかよく分かんないんだもん。そういうのが好きな人は、一体どういうところに魅力を感じてるんだろう?あ、でも各地の美味しいものは食べてみたい。
「食べたら出るぞ」
「うんっ」
僕らは店を出ると、バイクを停めた駅に行って駐車料金を払うと、再び西を目指した。
*
「わああ、海だぁーっ!!」
バイクの後ろに乗ったままキラキラと光る海を見て、僕は思わず叫んでしまった。写楽は僕のためにわざわざ海沿いの道を選んでくれたらしい
「きれー……でも、寒いっ!!」
「おう、寒ィな……!」
冬の海、しかもバイクに乗っているから寒いし、風が顔に当たるのは寒いを通り越して痛いけど、それでも水面に太陽がキラキラと反射している様子はすごくきれいだった。なんだか、前に写楽と行った海とは違う感じがする。同じ海なのに、場所が違うからそう思うのかな。
海に行く途中でお昼ご飯を買っていたから、僕らは海が見える堤防に座って軽い昼食を済ませた。
「この調子だと、夜までには奈良県に入れそうな気がする」
「そうなんだ、案外早いね」
「次は山だからな」
「それも楽しみ!」
僕は昔から海が好きで山にはあまり馴染みがないんだけど、それでも写楽と一緒ならどこでも嬉しいと思った。
海を通り過ぎたあとも、僕らの逃避行という名のドライブは続行していた。ガソリンを入れたり、トイレ休憩をしたり、少しおやつを食べておしゃべりをしたり……この緩やかな旅も今日で終わりなのかって思うと、なんだか少しさみしかったりして。
ちなみに写楽は、帰りはもう高速道路を使うって言ってたから大阪から東京でも一日で帰れるらしいんだ。だから最低、ガソリン代だけ残しておけばいいのかなって……でもやっぱり、無駄遣いはできないけどね。今日は多分、奈良県にお泊りだから。
それにしても、海を過ぎてから少し町の中は通ったけど、今はずーっと山の中だ。最初は大きな山にテンションが上がったけど、少し見飽きてきたくらい。
「ねえ、今ってどの辺なの?」
「伊賀市。忍者の里で有名なとこ」
「へぇ!そうなんだ~」
「もう少し上の方行ったら滋賀の甲賀もあるぞ」
「へぇ……」
分かったように返事してるけど、実は あんまりよく分かってない僕なのでした。地理も歴史も得意じゃないからね……。
*
辺りが薄暗くなってきた頃、ようやく奈良県に到着したらしい。
「ちょっと休憩すっか……」
「うん」
写楽はだいぶお疲れのようで、ほとんど客のいないセルフのガソリンスタンドで休憩することにした。
「今夜はぜってぇホテルに泊まるからな。どんなにボロくてもいい。もしくはラブホ」
「ラブホテルって泊まれるの?」
「知らねぇ。けど、田舎だし山だし泊まれるんじゃね?周りに何もなかったら追い返されたりはしねぇだろうよ、金さえ払えば」
「そういうものなの?」
写楽が大丈夫って言えば大丈夫な気がする。でも、なんだかちょっぴり不安だ……。
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