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7羽

空が紫色に染まる時間のソルシエール玄関扉の前にはルシエールの店長カミラとご丁寧に礼服を着込んだ紳士風な人物が密談をしていた。この時間からカミラと会う人物など碌なやつではないのをシャルルは知っているので思いっきり顔をしかめてカミラに話しかけた。 「二人でこそこそなにやってんだよ」 カミラに話しかければ、カミラは含みのある笑みを浮かべて老紳士の男性にシャルルのことを自己紹介した。 「これがうちのNo.1、シャルル・ローランよ」 白髪で口髭を蓄えた老紳士の男性は紹介されたシャルルの方を見て帽子をとって一礼をした。 「私はチャーリーと申します。これから5日間お世話になります」 客に丁寧に挨拶されたのは始めてでシャルルはたじろいでしまう。 「早速ですがシャルル様にはこちらを着けていただきたいのです」 挨拶もそこそこに手渡されたのは目隠し用の黒い布。 「目隠しプレイがご所望ですか?」 訳もなく目隠し用の黒い布を出されて困惑しながらもチャーリーに問う。チャーリーはすぐさま首を横に振った。 「あなたが奉仕する相手は私ではないのですが、身分を知られるとまずいお方なので念の為に目隠しをしていただきたいのです」 「そんなに高貴なお方ならこんな場末の売春宿じゃなくてもっと立派でプライバシーを守ってくれるところがあるんじゃないですか?」 「カミラが信頼している貴方しか頼めないのです」 じっとこちらの心中を伺うように見つめられて思わず視線をそらす。半ばヤケクソ気味に老紳士のてから目隠し用の黒い布を受取り装着した。 「では、行きましょう」 目隠しのせいで真っ暗闇になった視界で老紳士に手を引かれながら船に乗り込む。 「ノアちゃんの事は心配しなくて大丈夫よ」 そんな声が背後から聞こえた。 どれくらい船の上にいたのだろう、暇つぶしがてらに老紳士に話しかける。 「老紳士さんは退役軍人かなにかなんですか?」 その言葉に老紳士はピクリと反応する。 「なぜそれを?」 「立ち居振る舞いが紳士を装っていても一挙一動こちらの動きを観察している節があったので。仕事柄、憲兵隊の相手をすることもあるので。そういう挙動には敏感なんですよ」 老紳士は息を吐き出し、えぇと答えた。 「もとは騎士隊に属しておりました。それももう何十年も前の話ですが…」 その続きを老紳士は話そうとしなかった。シャルルもそれ以上聞かずに水かきが水をかき分ける音だけがあたりに響いた。 やっと目的地についたのかガタンと船が揺れた。 そのまま老紳士に手を引かれるがままにある部屋へと案内された。そこでやっと暗闇しか映していなかった眼に光が映った。そこは、一つ一つの家具に上品さがある洗練された空間だった。 そして、シャルルが一番驚いたのは中央のソファーで優雅にお茶を嗜んでいる人物。 その人は、国の吹き溜まりに住む子供でも知ってる人物───アトラス=ヴィスタ=ラストライオス。 この国を収める王であった。

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