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9羽
その行為に思わずぽかんとする。先程の雰囲気は行為に及ぶ雰囲気だったのに、王様は何事もなく席へと戻っていったのだから。
本当に話をするだけなのか?いやまだ、対面して1時間も立っていないが、5日間もあるのだからいつかは事に及ぶのだろう。それに、客が話をしたいと言っているのだ、キャストはそれに付き合うしかない。
「王様はなぜ僕を指名したのですか?」
不躾な質問とわかっていながらシャルルは聞かずにはいられなかった。この国を治める王たる地位の人物が場末の売春宿で働くキャスト、しかも男を指名するなど普通ならありえないからだ。
「興味があったからだ、ベータとまぐわうことに」
高貴であらせられる王様の口からそのような言葉が紡がれてシャルルは呆気にとられた。
「私が住んでいる区はアルファしかいない。しかも、性行為はオメガとするのが常識だ。だが、私は運命の番であるオメガに勃たなかった。だから、ベータで試そうと思ったのだ。私が不能なのか、不能ではないのか」
すごい量の情報がシャルルに浴びせられる。決して公にしてはいけない王様の秘密を会って30分もしないうちに知ってしまい、目を見開くシャルルに王様が続ける。
「もし、今夜君で勃たなければそのまま帰っていい。勿論、料金はきっちり払う」
「……それなら、手始めにフェラから始めますか?」
土砂降りのような情報量で頭が混乱しているシャルルはそんな身も蓋もない提案をしてしまった。
「それもいいが、まだ日は高い。先程も言ったように私は君のことが知りたいのだ」
好きなものは、嫌いなものは、趣味は、次々と浴びせられる質問に目を回しながらもシャルルは答える。
好きなものは弟と母親。嫌いなものは父親。趣味は弟と一緒にいること。
質問のすべてが弟関連なことに対して、
「君は弟思いなのだな」
アトラスは伏し目がちにそう答えた。そしてそれ以上質問してくることはなかった。
「この仕事を受けたのも病気の弟の薬代のためです」
きっぱりそう答えたシャルルにアトラスはそうかとそれだけ答えた。
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