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11羽

シャルルが目を覚ますとそこは見覚えのない空間だった。継ぎ接ぎしてなんとか体裁を保っているアパートメントでも、5日間過ごしたホテルの部屋でもない。 丸みのある天井には緻密な彫刻を施され、今まで住んでいたアパートメントなどすっぽり入ってしまうほどにでかい部屋にシャルルは目を見開く。 「何処だ、ここ」 この部屋の中央に備え付けられた天蓋付きのベッドの上で呆然とあたりを見回す。左には本棚と机、右には壁の代わりの大きな窓とベランダ。そのどれもがシャルルには心当たりが無かった。ふと下を見ると自身のボロ切れのような服ではなくシルクで作られたローブを着せられていた。 置かれた状況に呆然としていればチャーリーがノックをして入ってきた。 「失礼いたします。お気分の方は如何でしょうか?」 「突然知らない所につれて来られて最悪な気分ですよ」 精一杯嫌味に聞こえるように行ったつもりがチャーリーは申し訳ありませんと頭を下げた。 「なぜ僕はここに?」 「アトラス王があなたを気に入ったからです」 「それで拉致監禁?」 チャーリーは否定しない。 なるほどとシャルルは理解した。自分がなにか王様の琴線に触れてこんな馬鹿げたことをさせたのかと。だとしたら、こんな馬鹿げたことをやめさせて家に帰らせてほしい。僕の帰る家はノアがいるところなのだから。 「帰ります。弟が心配してる」 かけられた布団を剥ぎ、ベッドから降りようとしたところでチャーリーが耳を疑う発言をした。 「ノア様もこの屋敷にいらっしゃいます」 その言葉を聞いて、ポカンと口を開く。そして、大股でチャーリーに歩み寄り合わせろと命令した。 「かしこまりました」 チャーリーは一礼して背を向けて歩き出す。ついてこいと言う意味なのだろう。大人しくチャーリーの後へとついていく。 いくつもの部屋を通り過ぎ突き当りのドアにチャーリーは止まり、振り返る。 「ノア様はこちらにおられます」 ドアノブを押して中を確認する。先程の部屋のような内装の中央に置かれたベットの上で誰かが寝ていた。恐る恐る近づくと、その誰かはシャルルの生きる理由であるノア・ローランであった。見たところ乱暴はされていないようでシャルルはほっと息をついた。 梳いてある前髪の髪を横にどかし、まろい額にキスを落とす。 すると、ノアのまぶたが持ち上がりシャルルを視界に入れた。そして、力が抜けたような笑顔を浮かべた。 「おはようお兄ちゃん」 青がかったエメラルドグリーンに自身を映されシャルルは今度はまぶたにキスを落とした。

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