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12話
「本当に二人は仲が良いのだな」
思わず無条件に頭を垂れてしまいそうになる圧倒的支配者のオーラを纏うその人はアトラス=ヴィスタ=ラストライオスだった。
「お兄ちゃんは僕の全てですから」
毅然と言い切ったノアにシャルルは金糸の髪を優しく撫でる。
「君たちにはこれからこの屋敷に住んでもらう。勿論、衣食住は保証するしほしいものがあれば用意させよう。ノア・ローランを治療する医者も腕利きのものを当てさせよう。決して不自由はさせない」
アトラスが言った破格の条件に先に声を上げたのはノアだった。
「そんな破格な条件を提示しておいてあなたは何が欲しいのですか?」
ノアのその問いに、アトラスは軽く目を閉じると覚悟したかのようにゆっくりと口を開いた。
「シャルル・ローランの全てだ」
それから僕は篭の鳥になった。
そして、いくつもの約束を結ばされた。
一つ、決してこの屋敷内から出てはならない。
二つ、食事は必ずアトラスと食べること。
三つ、アトラスの夜の相手をすること。
四つ、ノア・ローランに会えるのは週に二度だけ。
四つ目の条件を提示されたときシャルルは王様に掴みかかりそうになったのをノアが手を引いて留めた。そして、シャルルにとっては死活問題である四つ目の条件を当の本人が頷いたのだ。
『その条件を飲めば兄に何一つなく不自由はさせないのですね?』
その問いに勿論だ、と頷いたアトラスに、ではその条件を飲みますとノアは微笑む。
ノアが頷いてしまえば納得していないシャルルでもその条件を飲むしかなくなる。ノアの望みならシャルルは反論できないのだから。
カラトリーと食器が当たる音を響かせながら、今まで一回も食べたことない程の豪勢な料理を食していく。マナーがなってないシャルルの食事でも王様は何も言わずに黙々と己の料理を食していた。
その様子を横目に見ながらシャルルは考える。なぜこんな事になったのか。きっかけはあの5日間だろう。だが、王様の琴線に触れるようなことをした覚えはない。シャルルは他の客と同様の態度を王様にもしていたはずだ。それがなぜ監禁という自体になるのか、シャルルには皆目検討がつかなかった。
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