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13羽 ※R-15

沈黙が横たわる食事風景を先に壊したのは件のアトラスだった。 「口に合わなかったか?」 無言で食していたシャルルをアトラスは口に合わないた思ったらしい。あの吹き溜まりに住んでいたら一生かけても食べられられない豪勢な料理が口に合わないはずがないが、シャルルはノアの件に対してまだ納得してないので少し意地の悪い返しをした。 「まぁ、こんな豪勢な食事はミルクに浸したパンが主食だった舌には合いませんね」 硬い音声でそう答えれば、肉を切っていた手が軽く止まり、そうかと返してまた動き出した。 シャルルはこの王様のことが全くわからない。 その行動原理も、ベータの自分を閉じ込めて愛人まがいのように接するのかさえ。 シーツの擦れる音がする。火照った体温と洗い息。水銀の瞳に渦巻くのは愛欲という名の欲望。 いつも通り気持ち良いふりをして相手がイくまでやり過ごす。過剰な喘ぎ超えを出して、自分も感じているのだと演出するのだ。 するとほら、男なら簡単に命の種を肚の中に吐き出すのだから。 ベータにしか勃たない可哀想な王様を憐れみながら、命の残滓を舌でキレイにする。あまり美味しくないそれには生命を宿す種は入っていないという。ベータの男は孕まず、この残滓は命を宿さない。全く持って不毛なやり取りだ。 汗だくになりながら横たわっていたら、アトラスに髪を梳くように撫でられた。そこにはあるはずもない愛情が伺えてぞわりと背筋が総毛立つが、王様の手を振り払うのは不敬だと学のない頭でも知っているので唇を噛み締めて耐える。 「君の髪はキレイだな」 パン、と乾いた音とともに髪をなでていたアトラスの手を振り払う。折角耐えていたというのにその言葉で耐えきれなくなったのだ。 シャルルの髪。烏の濡れ羽色をした異国の地に多いその髪をシャルルは心底嫌っていた。異国の地からやってきた父から受け継いだその髪はシャルルにとっては自分たちを捨てた父を嫌でも思い出すからだ。 「すまなかった」 手を跳ねた事に怒りもせずに逆に謝られたことに対してシャルルは唇を噛む。 「僕はあんたが嫌いだ」 何考えてるか分からないところも、無理やりこんな所に拉致監禁してしまう傲慢さも、そして、ノアとの接触制限を課すところもすべて大嫌いだった。かすかな憎しみさえも覚えかけていたかもしれない。それでも、命より大事な弟に対する条件にシャルルは折れるしかなかったのだ。自分では到底成しえない条件だ。衣食住、そして、最高峰の医療。そのどれもがあの吹き溜まりに住んでいたら得られないものばかり。 だから── アトラスを利用する事に決めたのだ。

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