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15羽

「何をやっている」 その一言で場の雰囲気はそちらへ移動した。普通に立っているだけでも威圧感のある存在、アトラスがそこにいた。 「ロジェ何をやっている。この屋敷への立ち入りは禁じているはずだ」 ロジェとアトラスに呼ばれた目の前の人物は大袈裟なほどに体をビクつかせ怯えるようにアトラスへと視線を向けた。 「申し訳ございません」 シャルルから飛び退き、即座にアトラスの前へ片膝をついてロジェは頭を下げる。その仕草冷めた目で見下ろし、次いでシャルルへと視線を向けた。 「何があった」 一瞬シャルルに向けて問いかけたのかと思ったが、すぐに隣いた従者が返答した。  「ロジェ様が…」 従者が事細かに今まであった出来事を話す前にシャルルが口を開いた。 「別に何も。ただ、あんたをどうやって振り向かせたらいいかを聞かれただけ。どう?本人から教えてあげれば。どう行動したら振り向くか」  この部屋の惨状を見てそれだけではない事はアトラスには容易に想像がついた。そして、シャルルの僅かに赤くなった頬に気づかないわけがなかった。それでも、何も知らないふりをしたのはシャルルがどう反応するか気になったからに他ならなかった。 「なら、答えをやろう。私がロジェに振り向くことはこの先一切無い」 シャルルに向かって放たれたその言葉は、答えを得た主にとって一番聞きたくないもので、ロジェは血が出るほどに唇を噛みしめる。 だが、とアトラスは続ける。 「私は王だ。国のため世継ぎを残さなければならない。私達は運命の番だからな。きっと優秀な跡継ぎが生まれてくるだろう。そのために君は必要だ。ロジェ」 頭を垂れていたロジェの頬を触って上向かせる。新緑の瞳には絶望と困惑と愛情が絡まって混ざりあったような曇天が浮かび、その頬をなぞるように雫が絶えずこぼれ落ちていた。 「あなたの為に優秀な跡継ぎを必ず」 ロジェはそれしか言えなかった。優秀な跡継ぎを生むための道具。そう断言されたも同然だった。それでも、ロジェにとっては唯一の運命の番だ。番にーーそしてこの国の主がそう望むのならロジェはその役目を全うするしかないのだ。  「あんた、本当に性格悪いよ」 従者に抱えられるようにして立ち去ったロジェを見送りながらシャルルは一言そう呟いた。

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