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16羽
「チャーリー、医者を」
扉が閉まるやいなや王様は後ろに従えていたチャーリーに指示する。チャーリーはすぐ様と踵を返していく。
「張られた頬は平気か?」
アトラスはシャルルと目線を合わせるように片膝をつき、赤く色づいた頬を優しく撫でる。
「僕よりオメガの方を心配しないのかよ。仮にも運命の番だろ」
「私の気持ちは先程言った。彼は運命の番だが彼に愛情を感じるような事は一切無いと」
「にしても、言い方があるだろ」
「私はこういう言い方しか出来ない」
その言葉でははっと乾いた笑い声がシャルルの喉からこぼれた。
「あんた、いつか味方に刺されて死ぬよ」
アトラスに顎を優しく引かれ口腔内を晒す。ロジェに張られた時にできたであろう傷を見てアトラスの瞳に怒りが一瞬浮かんだが、いつものように何を考えているか分からない水銀の瞳に戻る。
チャーリーが医者を引き連れて戻り治療されている最中、アトラスはシャルルを見聞するかのように一切目を離さずにその光景を見ていた。
「そんなに見つめられると体に穴が開きそうなんだけど…」
げんなりしながらも大人しく治療を受けた頬に大きなガーゼを当てられ医者とチャーリーは退室した。
再び二人きりになった二人の間には気まずさが横切っていた。
「あぁ…とりあえず、フェラは暫く禁止みたいなんで手コキにしときます?」
いつも行為の始まりはフェラからだったのだが、ドクターストップをかけられフェラはできそうにないのでその代わりとして手コキを提案したのだがアトラスは首を横に振る。
「治るまでははそういう事はしない。安静にしてなさい」
それだけ言うと、アトラスは部屋を退出してしまう。
一人残されたシャルルは鉛を吐き出すような重い溜め息をついた。
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