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20羽
「もうすぐ発情期らしいですね」
行為後のピロトークには似つかわしくない話題にアトラスの眉がピクリと動く。
「そのことを誰から」
「本人から」
サラリと告げられた事実にアトラスは前髪をかきあげ天井を見ながら深い息を吐いた。
「そうだ。オメガの発情期は唯一アルファの遺伝子を次世代に紡げる機会だ」
「でも、王様ののソレは番の前では役立たずなんですよね?如何するおつもりですか?」
離れた手のせいで前髪がアトラスの表情を隠してしまう。
幾ばくの沈黙が部屋を包む。
「手伝って欲しい。正確には、ロジェの前で私とセックスして欲しい」
─────────。
「いいですよ。その変態プレイに付き合ってあげます。でも、そのオプションは高いですよ?」
おどける様にアトラスに尋ねるシャルルにアトラスは幾らでも出すさと頷いた。
「で、視姦プレイにOKだしたんだ」
「まぁね。それがお仕事だから」
クスクスと喉を震わせて面白そうに笑うノアに頬杖をつき眉根にしわを寄せ拗ねたようにそっぽを向いた。
「もう、お兄ちゃん拗ねないでよ」
「拗ねてない」
拗ねないで、拗ねてない。それを何回か繰り返す。
「感想、聞かせてね?」
喉を震わせながら冗談のように行為の感想を求めるノアにわがままを言う子供をなだめるように
「仕方ないな」
と答えた。
シャルルが自室に戻り、ノアだけが取り残されたテラスに咳き込む声が響く。
ごほり──。一際大きく咳とともに飛び出した液体はノアの掌を真っ赤に染め上げる。
「感想は……聞けなさそうだなぁ」
真っ赤な手のひらを眺めながらノアは困ったように微笑んだ。
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