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◇ ◇ ◇
「店長! これはどこに置きますか!」
早朝、真宮の元気な通る声が店内で響いている。翌日から張り切ってやってきた年下のアルバイトは、やる気満々のようだった。初日は藤崎が起きるより先に店の前にいた。初めからそんなに飛ばしていたら後が持たないよ、と言ってみたが、まるで聞いていない様子だ。
「それは今日から入れる新しい子だから、ポップを作らないとダメなんだ。だから左側のエリアに置いてくれる?」
指示をすれば素早く動き、頭の回転も速い。仕事内容はすぐに吸収していくし、よく気が付くから取りこぼしの仕事が減っていった。まさかここまでできるようになるとは思わずに、藤崎は時給の安さにますます悪い気になってしまう。
「真宮くん、あまり飛ばしすぎないでね?」
「あ、平気です。前の会社でも結構忙しくて大変だったんですけど、体動かすのも慣れてますから」
キラキラと光るような笑顔を差し向けられて、藤崎は目眩がしそうだった。真宮の笑顔はとたんに周囲の雰囲気をやさしい空気で包んでしまう。
初めて花を買いに来た時も、アルバイトの話した時も、面接をした時も、そこまでの笑顔を見せなかったから予想外だった。それはまさに笑うと王子のようだ。
「真宮くんって、以前バイトで花を扱ってたって言ってたけど、それにしても慣れてるよね」
「え、ああ……そうですか? 器用な方だとは思ってますけど、そう見えますか?」
何となく沈んだような表情を浮かべたので、おかしいなと思った。別に責めたつもりはないし、むしろ褒め言葉のはずだ。
「うん……。おうちも花関係とかそういうの扱ってたりする?」
何となく手慣れている彼を見て、冗談めかして言えば、彼はさらに困惑して黙っていた。その反応があまりに不自然だったので、この話題を振るのを止めた。
嫌なことを言ったのかと思い、謝ろうかと口を開くと、そのタイミングで店先から声がかかり、彼はサッと足を向けてしまった。
さっきの顔が気のせいだったのかと思うほど笑顔で接客しており、年配のお客様も楽しそうに話している。なんとなく気がかりになりながら、藤崎は店先の真宮を眺めた。
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