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(爽やかな、笑顔か……)  真宮が来て一週間ですぐに変化に気が付いた。来店する客層がガラッと変わったのだ。いつは地元の、どちらかといえば年嵩のお客様が多かった。けれどここ数日は、制服を着た学生や、OL、若い主婦層がやってくる。明らかに真宮の影響だろう。  そしてこれを機に三輪バイクの購入をした。車よりは安かったが、やはりそれなりの値段がして懐具合はよろしくない。友人がバイクの後ろのボックスにさんざしのロゴを入れてくれた。青い色の文字は店先のテントと同じ色だ。少しの配達ならこれでいけるだろう。どのみち免許のない藤崎には無理だったが、真宮頼みで買ったようなものだ。  美澄にはまだ気が早いんじゃないか、と言われたが、何かきっかけがないと踏み切れないと思っていた所だったので、いい機会だった。  そして近くの教習所に通い始めた藤崎は、店を数時間単位で真宮に預ける事も増えていった。 「楽になったのはいいけど、なんかすごいなぁ」  藤崎は店の奥から女性に囲まれている真宮を眺めて呟く。まるでその場所だけメルヘンに出てくるようなキラキラした世界が広がり、こちらは呆然とするばかりだ。 (いや、モテたいわけじゃないけどさ……)  恋愛対象が女性ではないのに、心の中で変ないい訳をしてしまう。 「変な顔」 「うぇっ!」  レジ前で配送の伝票チェックをしていると、背後から突然声をかけられおかしな声が出た。振り返ると咥えタバコの美澄が、自宅の上がりかまちに座っている。 「ちょっと、美澄さん! タバコはやめてくださいってば。それに変な顔ってなんですか、もう!」  藤崎はすぐに奥から灰皿を持ってくると、突きつけるように差し出した。店内との境にレースのカーテンを掛けているから姿を見られることはないだろうが、匂いは流れるかもしれない。ニコチンの匂いがする花屋なんて最悪だ。 「何度も言いますけど、本当にここではやめてください」 「は、はい。すみません……」  能面のような顔で詰め寄れば、それが本気で怒っている藤崎の顔だと知っている美澄は、抵抗しないで両手を挙げた。 「で、新人くん頑張ってるの?」 「ええ、なんかもう客寄せパンダみたいですよ」  どれどれ、と美澄が部屋と店の境に下がっているカーテンから、店先の真宮を盗み見る。その下から同じように藤崎も顔を出した。

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