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 テーブルの上に白い紙袋が置かれてあった。そして心配顔だった真宮の表情が硬化する。それほど迷惑をかけたということなのかもしれない。ここのところ彼には数え切れないほど世話になっている。自分がこんなにダメな人間だったなんて思わなかった。奥村がいた頃も、きっと同じように知らないところでフォローされていたのか。そう思うと情けない気持ちになった。 「ごめん。風邪、真宮くんにもうつるかもしれない。僕のことはいいから……」 「俺は帰りませんよ」  布団の脇にどっかりと腰を落ちつけた真宮は少し目元が赤くなっていて、けどなぜか今までと違う雰囲気を纏わせている。 (なにか、あったのか?)  そう感じるのはまだ熱があるからだろうか。どこか決意にも似たものを真宮の瞳から感じる。心配をかけてしまったことで、もしかして怒っているのかもしれない。 「ひとつ聞いてもいいですか?」 「ん、なに?」 「どうしてあのとき、あんなに動揺してたんですか? 俺、何かまずいことをしたんでしょうか。作ったページに問題でもあったんですか?」 「違うよ。そうじゃない。僕が悪いんだ。ちゃんと君に説明しなかったし、僕が注意しなかったから」  天井を見つめながら話していたが、奥村のスケッチの事を思い出した藤崎は、うっすらと涙の膜が張ってきたことに焦って何度も瞬きをする。 「あの、全部話してくれませんか?」 「でも君は悪くないし、だから……」 「すべて聞きました」 「……え?」 「美澄さんから聞きました。藤崎さんと亡くなった奥村さんの事。彼のご家族の事も、この花屋の名前の由来まで」 「ああ……もう、あの人は、なんで言っちゃうかな」  普通に考えて、あの美澄が藤崎に断りも入れないで他人の過去を話してしまうなんて思えない。関係のない真宮に話した理由を考えるが、熱が高いのか集中できずに諦めた。  自分の一番弱い部分を知ってしまっても、面倒だとは思わずにこうして側にいてくれる真宮に、押さえきれない気持ちが膨らんだ。そんな彼に、実家へ帰れと言わなければいけないのかと思うと、藤崎はさらに苦しくなる。 「――あのね、今日、お客さんに言われたんだ。ホームページの写真と同じ花を見ましたって。でもそのページ僕は見てなかったから、念のために見せてもらった。スケッチ画像をトップに使ったんだって、すぐに分かった」 「はい。画像フォルダにいい感じのがあったので。なんかこう、店のイメージというか直感でいいなと思いました。あれ、使っちゃだめなものでしたか?」

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