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 藤崎は言うべきか迷った。悪いのは自分だし真宮を責めるような事は言いたくない。かといって、納得させられるだけの言い訳は思いつかなかった。 「――えっと、あのイラストは、浩輔が描いたものなんだ。生前にあのスケッチのアレンジメントでコンベンションに出たいと言ってたやつ。でも、画像フォルダの中に一緒に入れてしまってたのは僕だ。君は悪くないよ。だから気にしないで――」 「ど……して、どうして、藤崎さんは俺を怒らないんですかっ! 勝手にするなって、なんで怒らないんだ……ッ」  静かな部屋に真宮の声が低く響いた。彼に対して怒るところは何もない。強いて言うならば、ページをアップするときに声をかけて欲しかった、くらいのことだろう。それをどう伝えていいか分からず、藤崎は黙り込んでしまう。 「俺、そんなにダメですか? できる限り頑張ってやってきたつもりなんです。いろいろ藤崎さんをバックアップしたいと思ってた。なのに、マーガレットの時だって今回だって、あなたは怒らない。俺は、藤崎さんに怒ってももらえない、どうでもいい……存在なんですか?」  大きくなる声を抑えつつ、震える真宮の言葉は藤崎の胸の中を揺らした。彼がどれほどの勉強家で、努力しているかなんて毎日見ていたから知っている。だからマーガレットの時もホームページの事も、それを咎める事なんてできなかった。自分自身が彼に助けられていることの方が勝っていたから。 「こんな時に言うつもりはなかったんですけど。美澄さんに先手打たれるのも嫌なんで、言います」 「え、どうしたの、急に……」 「藤崎さんが美澄さんと親しいのは聞いてました。けど、あんな風にあの人に触られてるのを見たら、俺だって焦ります」  藤崎の寝ている布団の脇で正座をしている真宮は、両手を太腿の上でギュッと握りしめていた。見下ろしてくる目はどこか苦しそうで、どうしてそんな顔をするのか分からなかった。 「もっと、時間をかけて知ってもらいたかったし、こんなにすぐに言うはずじゃなかったんですよ」  予定が狂った、と呟いた真宮は、真っ直ぐ藤崎の目を見た。 「俺は、藤崎さんが好きです」 「え……?」  動揺が声に乗って掠れた。真っ直ぐ見られているのが分かっていたけれど、藤崎は真宮の目を見られなかった。ゆっくりと鼓動が早くなっている。 「多分、ずっと前から。でも、藤崎さんが体調悪いときに言うものじゃないですよね。空気読めなくて、すみません。返事は今じゃなくてもいいんです。でもちゃんと、考えて欲しいです」

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