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 平静を保っていると思っていた真宮の声が最後の方で少し揺れていた。彼も緊張しているのかもしれない。好きだと言ってくれることはうれしかった。けれどそれはきっと、藤崎が思う好きとは違うだろう。同性同士の好きという感情の温度差が、どういうものかは知っている。今ここで僕もだ、と言ったところで、真宮はきっと藤崎を抱く事なんてできないだろう。誰もがそうだ。同性に好意を抱いても、その先にはどんな障害があるかなんて想像だにしない。  ましてや、真宮は華道の家元である長男で跡継ぎだ。きっと結婚も両親の決めた相手とするのだろう。そうなれば両思いになったところで、どうしようもない。 「真宮くん。それはきっと勘違いだよ」 「勘違い? それってどういう意味ですか?」 「どうもこうも、言葉のままだよ。それに君はゲイじゃないよね? 簡単に同性が好きだなんて、言わない方がいい」 「ゲイじゃなきゃ、好きになっちゃダメなんですか? 藤崎さんだから好きになったんです。男が好きなわけじゃないです」  あなただから、と言われ、思わず真宮の方を見てしまう。想像以上にやさしい表情をしていた。彼を見てしまったことで余計に心臓が跳ねる。熱のせいなのかそうではないのか判断ができない。ドクドクと心臓が体の中で暴れていた。 「美澄さんにも、告白されたんですよね?」 「されたけど、美澄さんの告白は冗談みたいなもので……僕をからかっただけだよ」 「藤崎さんがそう言うなら、俺はその方がいいです。ライバルは少ないに超したことはないので」 「ライバルって……あの人のは多分、そういうんじゃなくて。浩輔との事を知ってる人だから、それで心配してるだけなんだよ」  美澄とは奥村が亡くなる前からの友人で、兄のようで父親のようで、いつも近くでそっと支えてくれた。それは藤崎自身が頼りなく見えたからなんだと思っている。いつまでたっても彼に甘えてばかりで、もうそろそろ心配をかけないようにしなければいけない。けれどそう思った矢先に倒れてしまった。美澄はこれでまた自分の側から離れられなくなってしまうだろう。彼には彼の人生があって、それを美澄自信の為に生きて欲しいと思うのに、いつもその邪魔をしてしまっていた。 「で、その心配性の美澄さんは帰っちゃったの?」  真宮が告白してくれた事には触れないで、話をすり替えるように美澄の名前を出した。 「なんか、藤崎さんの好きなものを買ってくるって出て行きましたよ。すごくどや顔で……」 「えっ、なに? どや顔って……ははっ」  美澄のいつもの顔を思い出して思わず笑ってしまった。想像できる彼の言いそうなことや、しそうな顔はいつでも浮かんでくる。 「で、何買いに行ったの?」

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