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第五章 新しい恋に向かって 01

 ひとしきり泣いて落ち着いたあと、すぐに真宮は病院へ電話を入れてくれた。それを待っている間、生きた心地がしなかったが、美澄の怪我は軽傷で命に別状はないらしいことを聞かされた。  病院から美澄が事故に遭ったとかかってきた電話は、最後までちゃんと聞いていれば問題はなかった。  ――美澄誠二さんが事故に遭われて、こちらのM大病院へ運ばれました。軽傷で入院の心配はないですが……。  なぜ藤崎宛にかかってきたのかは不明だったが、軽傷なら本人がかけてくればいいのに、と心配した分だけ腹立たしくなる。藤崎は真宮の腕の中で大泣きしたあと、ひどい頭痛で症状が悪化し、美澄の様子を見に行くどころか布団へ逆戻りするハメになってしまった。  電話で美澄と連絡が取れた深夜、真宮からの状況報告はこうだった。  コンビニで買い物を済ませ帰る途中で、積もり始めた雪が美澄の車のタイヤをスリップさせた。スピードも出ておらず、相手が電信柱の自損事故だった。額と腕を打撲したくらいで済んだ、ということだ。しかし車のフロントはベッコリへこんでしまい修理に出すか廃車にするかは検討中らしい。しばらく気を失っていたので病院で精密検査を受けていたということだった。 「ごめん、真宮くん……」  奥村が亡くなる前と状況が似ていたことで、完全にパニックを起こしてしまった。それが原因で神経を高ぶらせ、症状を悪化させてた。顔を赤くして喘ぐように息を荒くしている藤崎を、真宮は心配顔で見つめている。 「そんな体で美澄さんに会いに行こうとする藤崎さんを見て、心配しましたけど嫉妬もしました」  ムッツリと拗ねたような怒ったような、それでいて声音はやさしくて、真宮の複雑な感情が読み取れた。 「でも、辛そうですね。さっき熱を測ったら結構上がっていたので、解熱剤を使った方がいいかもしれないです」  テーブルの上に置いてある薬の袋を手にした真宮は、ガサガサと中身を出しているような音をさせてから、どうしてか背中を向けたまま固まっていた。結構つらいので早くして欲しい、と思いつつ待っていれば、振り返った彼の顔があまりにも真っ赤なので驚いた。 「ど、どうしたのっ? 顔赤いけど……も、もしかして風邪が移ったとか!?」 「い、いえ……あの、これ……」  袋を差し出してきたのでそれを受取り、「解熱剤」と書かれた袋から中身を出した。やけに大きいので何かと見てみれば、それは流線型の座薬だった。変な照れで思わず頬が熱くなる。

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