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03

 固く閉じた蕾に冷たい異物が当たり、それがググッと中へ入ってくる。熱のせいで細部の神経が敏感になっているのか、その形をリアルに感じてしまっていた。自分でしているのではないから、というのもあるだろう。 「……んっ、く」 「力、抜いて……」  緊張して力の入った藤崎に、やけに色気めいた声音で真宮が囁く。ゆっくりと押し込まれ中まで入っていく感覚は気持ちいいものではなかった。出ないようにしばらく押さえてくれている真宮の気遣いはうれしいが、もういい加減手を離して欲しいと思った。 「あ、あの、もういいよ。大丈夫」 「は、はい。すみません……」  藤崎は体を起こし下着とジャージを引き上げる。あまりに照れくさくて顔を上げる事ができなかった。そして真宮の様子もどこかおかしい。正座した膝頭を摺り合わせ、もじもじと居心地悪そうにしているのが分かる。 「真宮くん、どうしたの? 早く手を洗って? その、ほら不衛生だから……」 「いや、えっと。すみません……」  座ったままの姿勢で布団からにじるように降りていく。何だろうと見ていると、真宮の股間がふっくらしているのが分かった。 「ま、真宮くん……」 「すみません……こんなになるとは、思ってませんでした」 「ああ、うん。若いから、かな?」  ヘテロな彼が異性ではない自分に触れ、股間を膨らませていることにどこかうれしくなった。好きだと告白されて、切ない声で大切だと言われ、騒がしいくらいに胸の中が落ち着かなかった。素直に反応した真宮の体にことさら驚き、同姓というハードルをものともしないそれに、藤崎は確かに高揚した。 「トイレ、行ってきます。すみません、不謹慎ですよね。藤崎さんが体調悪いのに、俺、こんな……」 「いいよ、気にしてない。それに助かったし。一人だと力はいらないし無理だったかもしれないから。恥ずかしかったけど、ありがとう」  藤崎の言葉を最後まで聞かないで、焦ったように真宮はトイレへと駆け込んでいった。  信じられないくらい鼓動が早くなっている。真宮には伝えなければいけないことがたくさんある。胸の痛むことも言わなければいけない。けれど今は体を横たえてゆっくりと目を閉じた。

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