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「ありがとうございました!」
できるだけ元気な声でお客様を送り出す。頭を上げるとフラッと目眩を覚えたが、閉店まではまだ時間がある。ホームセンターの煽りがあったとはいえ、今日はさすがに忙しかった。
藤崎の発熱はなんとか微熱まで下がり、店頭に立てるくらいになった。まだ店へは出ないほうがいい、と美澄と真宮に止められたが、今日はクリスマス当日で、悠長に休んでいるわけにはいかない。
「真宮くん。空き時間にご飯食べてしまってね?」
店の中でようやく一息付いた真宮が、花の整理を始めていた。分かりました、と声が飛んできて、藤崎も最後のお客様の接客を終えた。
中へ入ってレジにお金を入れたところで、彼の母親の件を今夜こそ告げようと決めた。クリスマスの日にそんなことを言うのはどうかとも思ったが、あまり引き延ばすわけにもいかない。二人きりになる事は多かったものの、今までどうしても思い切りが付かなかった。
(もうこれ以上、引き延ばせない)
レジの前でボンヤリしていれば、目の前に立った人影が光を遮った。
「あ……」
顔を上げいらっしゃいませ、と言おうとして固まった。目の前には神妙な顔の真宮が立っている。両手を後ろに回し、少しうつむき加減の彼の表情は少し赤く見える。
「どう、したの? 何か問題があった?」
「いえ、あの……、これ俺からです」
目の前に手のひら大のかわいらしいブーケが出された。大輪ガーベラは鮮やかなオレンジ、紫のキレイなアネモネ、そして中央にはワインレッドのカーネーション。カスミソウが濃い色の花をひきたてていた。ピンクの包装紙とシルバーのセロハンで包まれ、束ねているのは赤と緑のカーリングが付いたリボンだった。
邪魔にならない大きさのそれは藤崎の顔の大きさくらいで、真宮が照れくさそうに差しだしてきた。
「えっ……どういう――」
「メリークリスマス、です」
ありきたりなポインセチアでないところが彼らしいと思った。
「あっ……えっ、ありがとう」
驚いたままゆっくり手を出し受取り、真宮を見上げれば、彼は信じられないくらい顔を赤くしていた。花屋の店員に花を贈るなんて、と思われるかも知れないが、実際もらうとかなりうれしいものだ。しかし手の中のそれはどこかアンバランスで、リボンもよく見れば歪んでいた。
「あの、それ……初めて自分で、作りました」
「ま、真宮くんが作ったの!?」
「は、はい。練習はしたんですけど、さすがにすぐにはできないですよね。特別なラッピングとかもやってみたんですが、こんなに難しいとは思いませんでした」
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