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1-3 ロックじゃなくても。
「私はやっぱり左さんに書いて欲しいんですよね…
折角メンバーも増えて注目度が戻ってきたのに、こんなんじゃ勿体ないと思うんですよ」
「んーまあ先輩も報酬分はきっちり抑えて作ってるんですから
そこは邪険にしないでやってください」
「それはそう…ですけど」
左に仕事がこなくなったあとは自分の先輩であるライターの元に行ったらしい。
彼は自分の音楽というより求められるものをきっちり作る傾向があった。
それも1つのスタイルで否定は出来ないが、
左のその我が強すぎる世界に触れたあとだと物足りなく感じるかもしれない。
とはいえ左はファンがどうとか世間がどうとかよりも、
そんな風に彼が評価してくれている現実に価値があるように思えて
どこか機嫌よく微笑みながら、頑張って欲しいなぁ、などと他人事のように考えるのだった。
「例えば…左さんならどういう風に作りますか?」
冴えない男が隣の席に座りながら縋るような目で見てきた。
んーと少し考えて、ラブユーラブユーと合唱している少女達を見上げる。
「『アイラブラブラブ、ブラ外す』?」
思いついたことを言うと男は噴き出して笑った。
「やっぱ天才ですね」
別に狙ってやっているわけでもなければ、天才、だなどとは自分で思っていなかった。
少し人より頭がおかしいのかもしれないということは自覚していたが、
そんな所謂天才だとか呼ばれるような奇抜な思考回路の人間なんてこの業界にはわんさかいるわけで。
自分なんかはその中では埋もれている方だと思っている。
「やっぱり…どうにか掛け合ってみます!次の新曲!」
「ええ?大丈夫?」
冴えない男は少しだけ顔に活力を取り戻しているが、空回りしなけりゃいいがと左は苦笑した。
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