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1-5 ロックじゃなくても。

「…ちなみに誰?」 「えー内緒ぉ」 「……近藤さんとかじゃないよね?」 左は嫌な予感がして、冴えないプロデューサーを顎で指すと アイは怒ったようにまた頬を膨らませた。 「ちがぁうよぉ!もっと格好いいもん!」 「冗談だって」 「もぉ!」 アイは腕を腰に当てて左を睨んでくる。 まあよく考えればわかることなのだが、一応可能性は潰しておかねばならない。 「だからぁアイが言いたかったのはぁ 独立したら、ひだりせんせーよろしくねってこと」 「ええ?なんで僕?」 「だって最近プロデュースもしてるんでしょ?」 「まあそうだけど…」 謎に情報を持っているアイに左は苦笑した。 彼女のいう通り、今左は駆け出しのシンガー“晴空るりこ”をプロデュースしていた。 とある事務所が開いたオーディションで、 優勝は出来なかったがもったいない逸材だと目をつけ 別の事務所にこっそり推してデビューさせた。 ただし責任もって面倒をみろと言われていて半分押し付けられている形ではあるのだが。 とはいえ、目を付けただけのことはありデビュー曲はそこそこに 最近では歌詞を書かせ始め、ライブにも人が入るようになってきてはいた。 「だからアイもお願いしたいなぁって」 アイは両手を組んでアイドルらしい仕草でお願いをしてくる。 アイドルのプロデュースなど恐ろしくて仕方がなかったが、 デビュー当初から見ている身としては親のような気持ちになってしまって 左はため息を零した。 「んーまぁ…考えとく。一応ね。考えるだけ」 「やったー!ひだりせんせー大好きっ」 アイは左に抱き着いてきて、遠くから様子を伺っている近藤プロデューサーには 変な顔を向けてしまうのだった。

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