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1-10 彼の円滑な人生
次の日左は、かき集められた譜面がポストに突っ込まれてるのを見て
身体中から力が抜けてただひたすらボロボロと泣いた。
ギターも持たずに大学に駆け込むと、
右は顔を赤くして鼻を啜りながら講義を受けていて
教室の外から、隣の席の奴に心配されてティッシュを差し出され苦笑しながら受け取っている姿を
まるまる1時間立ち尽くして見つめた。
彼は授業が終わり、教室を出て
誰もが何事かと避けていくような左のとんでもない形相に
びっくりしたように目を丸くした後
「風邪引いたっぽい」
となんでもないことのように笑った。
その瞬間左は完璧に落ちた。
そうかこれが、永遠のテーマ。恋か、と。
様々なこだわりやしがらみが吹っ飛んでいった気がした。
勉強も生活も音楽も、何者にも勝る存在に彼がなったからだ。
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