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1-41 悪役でいい
やがてナナメに引っ張られながら階段をだらだらと降りて来たパジャマ姿の男は
夜中に起こされ大層不機嫌そうに目を細めていた。
「おいこら、今何時だと思ってんだ…」
「とりあえず左さん、上がってください。ね?」
ナナメに促されるまま左は家の中に誘導され、
リビングのソファに座らされた。
腕を組んで立ったまま左を見下ろしてくるヨコは、相当イライラしている様子だった。
「泣いてちゃわかんねえだろ…メソメソしてんじゃねえ」
ガリガリと頭を掻くヨコに左は、だってえ…、とまたさらに涙が溢れて来て
その左を宥めるようにナナメが隣にやって来て肩を撫でてくれる。
「まあまあヨコさんそう威嚇しないで…
左さん何があったか教えて下さい?
ちゃんと助けますから、ヨコさんが」
「あんま甘やかすなよ」
老夫婦のような会話をしている2人に
幾分か落ち着いてきた左は鼻をすすりながら隣に座っているナナメを見た。
「…みぎが、帰ってこなくて…電話もでなくて…」
左の言葉にナナメは心配そうに眉を下げた。
「とうとう愛想尽かされたんじゃないのか」
「ヨコさんっ!」
ヨコは面倒臭そうにため息をついた。
「今まで連絡もなしに、突然いなくなったりとかしたことないから…」
左は袖で涙を拭いながら呟いた。
この前、変な感じになってたのもずっと気になってたし
彼は、自分に何か隠しているのではないだろうか。
それもとても悲しくて、深くて痛い何かを。
それを少しでもいいから分けて欲しいのに。
こんな風に頼りない自分は、必要とされていないのだろうか。
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