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1-54 君がいる世界
「…右は…右だけが、僕の駄々を笑わないでいてくれる…」
左はぽつりと呟き、何故か泣きそうな目で見上げてくる。
結局よく分からず、意味わかんねー、と思うのだけれど
そこが左らしくもあって右はおもわず噴き出した。
「わかったよ。変なこと聞いて悪かったな…」
右はそう言いながら彼の頭をぐしゃぐしゃと撫でてやった。
そういうとこも好きなのぉ…、と左は謎に乙女のように涙で湿った声で呟いた。
自分で話題を振っておきながら付き合ってられなくなった右は、
彼を置いて歩き出そうとすると彼に腕を掴まれてしまう。
「み、右はなんで僕のこと好きなのさ?」
やり返すようにぐいっと両手で片手を引っ張られ
思わず地面に座り込んでしまう。
「僕のどこが好き?」
左は膝の上に頬杖をついてまた乙女のように小首を傾げた。
カウンターを食らってしまい眉根を寄せて、ええ…?と唸る。
「…お前といると、色々どうでもよくなるところかな」
右は左と同じポーズを真似してやった。
彼は瞬きを繰り返し、やがて顔を顰める。
「なにそれ…」
「お前こそ何それだろ」
右は面白くて笑ってしまうのだが、
左は何故か頬を赤らめながら口を尖らせてくる。
「……なんか、右はずるいよ…僕ばっか必死でさ…
こんな風に巻き込んだりして…いつ捨てられてもおかしくなくて…
もっと右に頼ってもらえるようにしたいのに……」
泣き出しそうに目を細める彼には、やれやれ、とため息を零して
彼の頬に触れた。
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