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自覚 —する—
グレイに向けて尻を突き出せば、体のどこにも触れられないまま、解されもしないまま、グレイの性器が充てがわれた。
「待って! まだ何もお゛っ……!!」
グッと腰を進められたら、俺の体は素直にそれを飲み込んでいった。
「あっ、あっ、あっ!!!」
「あー……簡単に入っちゃった」
「痛いッ……抜いて」
「そうじゃないと、オシオキにならないでしょ」
アレくらいの事で……いや、こういう奴って分かってんのに挑発した俺が悪いのか!?
体の中をヌルヌルと動くのに、異物感が不快でしかない!!
「ううっ……気持ち悪い」
「僕は気持ちいいけどね」
無遠慮に突き入れられて、なんだか悲しくなってくる。せめて少しでも快感を拾おうと、自分の性器に手を伸ばそうとした。
「手はついてろって言ったよね?」
「う゛っ……」
グレイに肩を引き寄せられて上体を起こすと、また壁に押し付けられそうになって、急いで岩壁に手をついた。
いくら入れやすいように尻を突き出したとしても、身長はグレイの方が低いのに……足が長いせいか平気で俺の尻を持ち上げるくらいに突き上げてくる。
服の中に手が入ってきて、体を撫でられたら……グレイの指の感触で、少しずつ気持ちよさを感じ取れそうだった。
「ふっ……うっ、うぅんっ……」
「あれ? もう気持ちよくなってきた?」
「……ってない! キスしたい」
気持ちを上げる材料が欲しかった、キスしたいって言えばグレイはきっとしてくれると思ったのに……。
「イヤだ、前向いてて」
ショックだった……想像以上にショックだった! グレイに冷たくされると傷つく、優しくして欲しい、いつもみたいに愛を囁いてほしい。
「んんんっ……ううっ……」
泣きたくなるような感情とは裏腹に、体はどんどん快感を拾い始めた。
自分の性器が勃ち上がりはじめたのを自覚して、ゆるゆると腰を振って気持ちいいところに合わせにいった。
「ん゛っ!」
ゴリッと前立腺に当たって、そのまま快感を享受するつもりで腰を振った。
「気持ち良くなっちゃったね」
「んあ゛ぁぁ……そこっ、突いて!」
「気持ちいいと反省しないでしょ?」
「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっ!」
口ではそう言いながら、ゴリゴリと押しつぶされて、思わず背中がのけぞった。
ギュッと乳首を摘まれて、ピリッと痛みが走ったが、体が気持ちいいことを優先させたがった。
「痛くてイ゛イからっ! そこっ……!」
乳首に爪が食い込んでも、それは下半身に響いて気持ちよさが上回った。
「あれっ!? 気持ちいいの?」
「気持ちいいっ……あ゛っ!」
グレイが背中に密着してきたかと思うと、頸に噛みつかれて……ッ!
「グレッ……あ゛ぁっ! 痛っ……!」
グッと首に歯が食い込む感触がっ……! 痛いッ! 本気で噛んでる!!! 食われるッ!
「痛いッ……グレッ……痛ッ……!」
あっ、気持ちいい、なんで!?
「痛ッ……イ……イくっ、イくッ!」
ああっもっと、噛んで、食べてッ俺をッ……!
ヘコヘコと腰を振って、快感を貪り、熱を吐き出そうとした時にギュッと強く根元を握られてッ……!
「あ゛ぁぁぁっ!! イかせてッ!! 出すっ! 出すからぁっ!」
「反省してないね!」
グレイの声は興奮に染まっていた。それを表すかのように、俺を突き上げる速度が速くなる。
「ごめんなさッ……ごめんなさいいいっ! もうしませんっ!」
「本当にッ? ……ッ、許して欲しい?」
頷きながらグレイに顔を寄せた、擦り寄ってごめんなさいと謝りながら媚びた。
もうイきたくて、イきたくてたまらなかった。
「グレイ、許してッ……」
目元に涙が浮かんで、もう意地悪されたくなくて、甘えた声で縋った。
「いいよ」
至極甘い声で許されたかと思ったら、俺のをキツく締め上げていた手で激しく扱かれて!
「愛しているよ、洸也」
「ああああああっ! ――ッ!!!!」
散々我慢した射精は、岩壁に勢いよく飛んだ。程なくしてグレイが俺の中から抜いて、俺の尻に向かって熱を放った。
上がってしまった息を整える、二人分の激しい呼吸音と波の音が耳に入ってきた。
膝から崩れ落ちそうになった俺を、グレイが両手で支えてくれて……イく前に愛してるって言ってくれたのが嬉しくて、なんだかすごくグレイに甘えたいような気持ちになった。
「グレイ……キスして」
「いいよ」
顔を寄せたら、嬉しそうにキスをしてくるグレイに、とにかく安堵した。
その顔を包んで、俺からもキスがしたくて……。
「グレイ、触りた……」
「ダメ」
食い気味に拒否されて、本気で涙腺が緩んだ。拒否された……俺の気持ちを拒絶された!
目尻が熱くなって、視界がじわっと滲むと、グレイの慌てたような声が聞こえてきた。
「あっ!? 魚持った手で触られたくないだけだよ! 洸也がイヤなわけじゃないから!」
「へっ……さかな!? さか……ハッ、ハハッ」
変な笑いが出てきた、よかったグレイに嫌われたわけじゃなかった。
「後でいっぱい触ろうね」
「……んっ」
チュッとキスされて、自分がどれだけ焦っていたのか自覚した。そして恥ずかしくなってきた……!
岩場の上に座らされてグレイが体を離すと、こっちを見ているジェイスと目が合った。
ジェイスの股間には背の高いテントが立っていて、海パンの上からいじり倒しながらその場に釣り竿を置いた。
「気持ち良さそうだったな」
「あっ……」
全部見られてた! 当たり前だ! 真後ろでパコパコやってんだもんな!!!!
「オレにもヤッて♡」
熱を孕んだジェイスのお誘いに、グレイは笑顔で快諾していた。
おっぱじめる二人を尻目に俺は海パンを履きなおして、ジェイスがおいた竿を手に取った。
魚が掛かってそうだったから、巻き上げればいいサイズのカサゴだった……これはあら汁に良さそうだ。
俺の背後ではパンパンと、肉がぶつかり合う音と、スパンキングの音が聞こえてくる。
子供みたいに泣いて謝って、そんなところをジェイスに見られていたかと思うと、カナリ恥ずかしかったが……背後で乱れまくるアイツの声を聞いてたらどうでもよくなった。
クーラーを開ければ魚が増えていて、俺がヤッてる間にちゃんと釣ってたんだと思うと、思わずフッと吹き出してしまった。
暫くしてご機嫌なグレイが俺の後ろにやってきた。二人がイッたのは声を聞いてりゃ分かってたが、真っ赤な尻を丸出しにして岩場に倒れているジェイスは、さすがに少し心配になった。
「楽しかったね、そろそろ帰ろうか」
小首を傾げてあざといポーズで言われたら、YESと答える他なかった。
なんだかんだで今日一番楽しんだのは、恐らくグレイだろう。
そして俺は認識してしまった……。
俺はどうもグレイに好きでいて欲しいらしい。冷たくされれば傷つくし、愛してると言われたら嬉しい。
一般的にこの感情に名前をつけると、恋愛感情ということになるんだろう。
そう自分の中で感情を整理した途端、認識した途端、急に心臓がドキドキしてきて、隣にいるグレイを意識せずにはいられなかった。
「洸也?」
不思議そうな顔で覗き込まれたら、自分の体温が上がっていく気がした。
「おっ……お前、ジェイス起こしてこいよ! 帰り支度するんだろ!?」
「勝手に起きてくると思うけど」
「ヤッた後くらい優しくしてやれよ」
「まぁ、洸也が言うなら」
しぶしぶグレイが歩き出してホッとした。心臓の音、聞かれるかと思った。
グレイに言ったことは本心で、あれは俺が優しくして欲しいから言ったんだ。
はー……ヤバい、どうしよう。どうしようもなにも、俺とグレイは既に恋人なんだから、フラれる決死の覚悟で告白なんてするわけじゃ無いんだが。
どんな顔していいのか分からない。
思えば誰かをちゃんと好きだと思ったのは、本当に久しぶりな気がする。
高揚した気分を落ち着けるように、俺は一人バタバタと帰り支度を急いだ。
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