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気づかないフリ
−−−島野瑞希side−−−
本当は、分かってたのに気づいてないフリをしてた。
俺の中での気になってる=好きになりかけてるだった事。
親にとっての良い長男であろうと、弟妹にとっての良い兄でいようとしてきた俺は、自分が同性に惹かれてることから目を反らし続けた。
いつかは可愛い女の子のお嫁さんを貰って、可愛い孫を家族に見せてあげるのが、親孝行だって思い込んでた。
だから、同性である遼一はずっと気になる存在だけど、フタをしてきた。遼一にとっても俺はなんてことない只の同級生だったはずだし。
実家のパン屋のチラシを遼一に渡したのもわざとだった。
遼一ならもしかしたら来てくれるかもしれない。
さも通りかかった風に「ここが島野の家か」とか言って。
実際には来なかったと思ってたけれど、妹が外で遼一に話しかけてたなんて。
なんで来てくれたの?なんで寄ってくれなかったの?当時の気持ちになって問い詰めたくなってた。
弟妹とおじさんの手前、我慢できて良かった。
それから遼一を真ん中に弟妹が座った時も、弟妹に嫉妬してる自分に驚いた。相手は小学生で俺の弟妹なのに、遼一の隣に座るのは自分でありたいなんて、なんて欲を持ってしまったんだろう。
泣いてる弟妹を抱きしめてあげたくて、遼一を真ん中にしたままに抱きしめた。
二人を慰めてるはずだったのに、俺の頭から二人の存在が消えて、遼一の匂いにクラッとした。今だけ、今だけだから。
もうじき遼一とは離れなきゃならないから、悪い兄ちゃんでごめんなって何度も二人に謝りながら遼一の存在を確かめられる距離に感謝した。
もう遼一も俺といるのが嫌になったんだろう。早々に店に連れていって指導するって言い出した。そうだよな、俺をただ置いといても借金回収出来ないし。
店には性別男だけれど薄布しか身に着けてない派手な感じの男性が数人いた。
俺も、数ヶ月もしたら、あぁなっていくのかな。きっとこの人たちも借金とか事情があって、この仕事をして、段々に心を殺していったんだ。俺もそうしなきゃ。
【ピンク猫ちゃんのお部屋】なんていう可愛い名前の部屋に導かれ、一緒にお風呂に入るよう誘われた。
お風呂。かなりハードル高いけど、これは銭湯と変わらない。男同士風呂に入るなんて大したことじゃない。思い切りいくんだ瑞希!と自分を励まして、豪快に服を脱いだ。
うん、このテンションなら大丈夫。
遼一とだって風呂に入れる。
そう思ったのは甘かった…ただ一緒に入浴するだけじゃない。ほんとに俺の考えは甘かったとすぐに知ることになった。
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