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だって親父が
−−−鈴木遼一side−−-
「お前時間かけすぎじゃない」
瑞希を店に連れてった次の日の帰りの車中で博美さんに言われた。
「なんのことですか?」
もちろん瑞希の事を言われてるのは分かってたけど、この話題は博美さんだろうと出されたくなかった。
「ちょっと遠回りするからな」
はぁ。見逃してくれる人じゃないか。遠回りせずに家に向かってくれればすぐだから、しらばっくれて終わりに出来ると思ったのに。この人そんな甘くないか。
カチッ。博美さんがタバコに火を点ける音すら大きく感じた。
「で、お前の同居人のことだけど、どうすんだ?お前の好きな奴なんだろ」
「そうですよ。こんな何年もみっともなく覚えてた俺は情けないと自分でも思いますよ。喧嘩強くなろうとちっとも変わらない。でもどうしようもないじゃないですか。俺と瑞希が幸せになる未来なんてないのに。少しくら夢見せてくれたっていいじゃないですか」
「馬鹿だな。ダメなんて言ってねーよ。ちゃんと親父さんに言うなり、借金はお前がどうにかするなり、なんかしら方法あるんじゃねぇの?」
くそっ、繁華街に入りやがった。ここの道路はいっつも両側路駐だらけで、ゆっくり走らせるしかないの分かってるくせに。
「だって親父が許すわけねーじゃん……」
「お前昔から二言目には親父が親父が…だな。あの人そんなに物分り悪い人か?まぁいい。同居人、俺にまかせればすぐにでも店に出してやるからお前はそこで足踏みしてりゃいいよ」
俺は…俺は本当はどうしたいんだろう。瑞希を店に出して早いとこ回収始める。瑞希を連れて逃げる。
そんなの無理だろ。
「今日の博美さんは意地悪だ」
「何言ってんのお前。親父に拾われてお前といるようになってから、お前にだけは本音だし親切のつもりだぜ。外側だけそれらしくするんじゃなくてさ、中身も頑張ってみたらどうだ?」
「中身…どうしたらいいんだろう」
「考えろよ。同居人の名前なんだっけ?」
「瑞希」
「瑞希ちゃんの事はさ、お前がこのままなら早いとこ店出せるようにしてやるから安心しろよ」
分からない。それが俺にとっての安心なんだろうか。このまま博美さんに任せてしまった方が楽になれるんだろうか。
分からないよ、瑞希。
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