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運動会の思い出と
−−島野瑞希side−−−
とりあえずね、俺は早くお店デビューするのと、遼一のとこの家事はこなさないと。
店に連れて行かれた後から、遼一とのスキンシップ、いや、人肌に慣れる練習がめっきり少なくなった。
困ったような顔で俺の頭を撫でる遼一の姿ばかり見てる気がする。もっと触らないのかな、キス、しないのかな。
頭を撫でられた後キスされるんだと思って、身構えて目を瞑ったら「ふふっ」って小さな笑い声がして、おでこに柔らかいものが当たった。
キスするんだって勘違いしたの恥ずかしかったし、おでこに触れられただけでもそこが熱を持った感覚になるんだ…って驚いた。
余韻に浸って何度も料理中におでこの辺り触りそうになったのは見られてなかったと思う。
居候させてもらって個人レッスンまでしてもらってるような状態なのに何で触らないんだろう。それだけ遼一が疲れてるのかな。俺のことで精神的にも疲れてるのかもしれない。
よし、今出来ることは一生懸命遼一の部屋の家事をすることだ。
今日も今日とて定時退社をし、真っ直ぐ帰宅してサッと掃除機をかけた。それから夕飯の用意。『貧乏暇なし』これって本当だよなと思いながら高校時代を思い出してた。
同じクラスじゃなくなってからは、あまり共通のものもなく話す機会がなくなってた遼一。
三年の体育祭、最後の種目であるクラス対抗リレーでは、お互いアンカーだったんだ。
隣にクラスで隣同士並んで座ってる遼一と俺。何か話したかったけれど、前に並ぶクラスメイトたちが走ってる中、急な世間話も出来なくて。
確か遼一と俺のクラス二位と三位でゴールして、みんなが一位の生徒を見てる時にはなしかけられたんだ。
「久しぶり」って、その場に似合わない声をかけられて肩に手を置かれたんだった。
あの時、最後の種目だったから、すぐに集合かかってそれ以上の会話もなくて、何も返事出来なくて悔やんだんだ。閉会式の後でわざわざ探して「久しぶり」って返しても、その後会話続かなくて変な奴って思われたくなかったし。
遼一、覚えてるかな。こんな些細な出来事覚えてるわけないか。
ごちゃごちゃ考えながらも、調理中の味噌汁の具に火が通ったようだから火を消す。味噌汁が一品あれば野菜が沢山取れるから、味噌汁はここに来てから定番で作ってる。
ガチャっと玄関が開く音がしてそちらを向く。早速帰ってきたんだ。
「お帰…り………あれ?」
そこに立っていたのは、遼一ではなく、確か遼一が兄貴みたいな存在の人って言っていた人だった。
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