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「遼一です。ご無沙汰してます。今日はお時間作って頂きありがとうございます」
実の両親に対する言葉か?って瑞希に驚かれそうだな。
「遼一、早く入ってらっしゃい」
母さんの声に少しホッとする。
「失礼します」
4人がけには大きなテーブルに手前に母、奥に父が座ってる。嫌だけど、俺が父親の前に座らなきゃ話にならない。
「今日は、大事なお話があってきました」
瑞希の顔を見る。大丈夫、さっき握ってくれた手のぬくもりがまだ残ってる。隣に瑞希がいてくれてるんだから大丈夫。
「俺は、この隣にいる島野瑞希さんと一緒に生きていこうと思います。なので、今までのような仕事でなく、真っ当な仕事を探して働きます。瑞希の親の借金も、一緒に払っていきます。なので…」
なので、なんだろう。親子の縁を切るわけではない。稼業を手伝わないという選択。それを親父がどう思うか。
「分かった」
「反対なら何度でも話を聞いてもらうつも………、えっ?分かった?」
「分かったって言っただろ。全く、やっと自分のしたい事を言ってきたな。お前も成人してる大人だ。好きにしたらいい」
「えっ?えっ?」
話がよく見えてない俺に母親が喋りだした。
「この人ね、遼一が産まれた時から、吊り目が俺に似て可愛い可愛いって、遼一を猫っ可愛がりしてね、でもそれじゃ下の者に示しがつかないって言って、遼一を見て自然と笑顔になっちゃうから、逆に怖い顔をして対処してたのよ。バカでしょ。で、厳しい父親像が引っ込みつかなくなっちゃって、遼一が自分からやりたい事を言ってきた時には、好きなように生きろって言うつもりだって。バカでしょう。ねっ、瑞希くんもそう思うわよね」
急に話を振られ、出されたお茶を飲もうとしてた瑞希が危うく吹き出しそうになった。
「あっ、その、馬鹿とかでは……とりあえず、遼一は愛されて育ったんだなって、さっきも出迎えてもらって感じました」
「そうなのよそうなのよ、瑞希くん良い子ねぇ。この人遼一を溺愛してるからこそ、うちの稼業も出来るような男に育てたいって言って厳しくして……でも、遼一には怖い父さんてイメージになっちゃったのよね〜。不器用な親子だわぁ。二人とも目付きが悪いだけで可愛らしいのに」
「あっ、朱美ちゃん、遼一の前で可愛らしいはやめてくれよ」
「いいじゃない、この際あなたも分かってもらえば。俺は遼一見ると目尻が下がりそうになるし、和食よりも実はパンもケーキも大好きな甘党なんですーって」
眼の前の光景がまだ信じられなくて頭で処理出来ないでいる。厳しい父親は実は俺の事が可愛くて厳しくしてた?日本男児たるもの基本は和食だ。って毎食和食食べてた人がパンもケーキも好き?俺は一体何を見てきたんだ?
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