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第10話 触れ合う

 榊原は以前より仕事が苦痛ではなくなってきていた。  さっさと片付けて倉田に会いに行きたい。  そう思うと嫌な仕事も深く考えずに次から次へとこなせていた。  人に不快な顔をされようが注文が取れなかろうが、ダメになったら辞めればいいと開き直っていた。    倉田のところへはさすがに毎日顔を出すのは迷惑だろうと思ったが、二日もたつと会いに行きたくなる。  行けば抱きしめてキスをしてくれる。  ただそれだけで進展はなかったのだが、離れていると倉田の温もりが恋しくなり充電切れのように感じた。      ある日、いつものように外来が終わった頃を見計らって顔を出すと、早く診療が終わったのか倉田は台所で料理をしているところだった。   「カレーですか?」 「そうだ。たまにはお前に作って食わせてやろうと思ってな。ちょうどいい所へ来た。もう出来上がるぞ」 「俺、今日来るって言ってなかったのに」 「以心伝心だな」    倉田がニヤっと笑う。  もう倉田と榊原はとっくに医者と患者と呼べるような関係ではなくなっていた。  キスはするけれど恋人というのでもない微妙な関係になっている。    食事を終えてコーヒーを飲んでいると、倉田がめずらしいことを言い出した。   「なあ、楓。お前、ワンルーム暮らしだと言ってたな」 「そうですけど」 「たまにはゆっくり風呂につかりたいだろ? 入っていくか?」 「風呂ですか」    唐突な提案に戸惑っていると、こっちだ、と言って風呂場に連れていかれた。   「わあ、広いですねえ」 「俺はこの風呂が気に入ってこの家を買ったようなものだ」    小粒の庭石のようなきれいなタイルが敷き詰められた広い風呂場に、今ではめずらしい木の浴槽。  ちょっとした温泉気分になれそうな風情の立派な風呂だ。  すでにお湯は沸いていて湯気がたっている。   「二人でもゆったりはいれるぞ」 「一緒にですか……」 「どうしたんだ、嫌か?」    倉田は悪戯っぽい目つきで榊原を挑発すると、頬にちゅっとキスを落とした。   「脱がしてやろうか?」 「い……いいです。自分で脱げます」 「遠慮するな。脱がせるのは得意だぞ」    倉田は強引に榊原のシャツのボタンをはずそうとする。  榊原は突然の意外な展開に頭がついていけなくなり、その場に固まって顔を赤らめていた。   「お前、俺に抱かれたいんじゃなかったのか」    倉田はさらにからかうように笑いながら、するすると榊原の服を脱がせてしまう。  慣れているな……と榊原は思った。  百戦錬磨というのは嘘ではないらしい。    かかり湯をして並んで湯船につかる。  倉田の裸を見たのは初めてだ。  想像以上に逞しく筋肉がついていて、何か運動でもやっているのかと思う。   「すごい筋肉ですね。うらやましいな」 「柔道をやっていたんだ。お前は肌が白くてキレイだな」    ただ一緒に風呂に入っているだけなのに、相手の身体を観察してしまうようでどうも照れくさい。   「俺もそんな筋肉隆々の身体だったら良かったのに」 「楓がそんなムキムキの身体だったら、悪いけど俺は抱けないぞ」    そうか……と妙に納得している榊原を見ながら、倉田は何を想像したのか可笑しそうに笑った。   「そこへ座れよ。洗ってやろう」    倉田は榊原の背後に回って背中を流してやり、榊原は自分で前半分を洗っていた。  ボディーソープをあわ立てて身体に触れてくる倉田の手に緊張していちいちビクっと反応してしまう。  それに気づいたのか、倉田はクスっと笑った。   「可愛いな、お前はホントに。大胆なことを言うのかと思えば、風呂ぐらいで緊張して」 「お、男の人と一緒に風呂にはいったことなんか修学旅行以来ないんですっ」 「お前は俺と一緒にいると、いろいろと初めての体験が多くて大変だな」    倉田は笑いをかみ殺している。  よくこれで俺に抱かれたいなどと言い出したものだ、と呆れている顔だ。    倉田は後ろから抱きかかえるように手をまわすと、榊原の胸をそっとなでた。  榊原はひやっと変な悲鳴をあげてしまう。   「な、なんですか」 「いいから、俺にもたれてじっとしてろ」    倉田は自分の足の間に榊原を挟み込むようにすると、両手で榊原の胸をなで始めた。   「男もな、ここは性感帯だぞ。神経が集中してるからな」    指先で胸の突起を触られて、榊原はあわてて逃げようとするが押さえ込まれてしまう。   「逃げるなよ。教えてやるって言っただろ」 「でも……俺そんなところを触られるのは……」 「わかってるよ、初めてだって言うんだろ。お前は初めてが多いからな」    倉田笑いながら後ろから首筋に唇を押しあて、ボディーソープでぬるぬるとした両方の胸の突起を執拗に弄んだ。  たまらなくなって喘ぎ声をあげると、風呂場の中に響き渡る。   「気持ちいいだろ?」 「あ……あっ……俺……」 「感じてきただろ? 元気になってるぞ」    榊原の中心はすでに硬くそそり立って、はちきれんばかりになっている。   「やっ……やめて……」   「違うだろ? 気持ちいいなら気持ちいい、と言わないとな。正直に感じたことを口に出すのがセックスを楽しむコツだぞ」    倉田は片手で胸を弄びながら、榊原の中心に手をのばした。

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