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酷くされて、冷たくされて、優しさという言葉から遠ざけられたい。自分のためだけに山吹はわざと、桃枝が嫌がる行為を強いている。
「課長の理性、負けちゃってください。……ね、お願いです……っ」
顔を近付けて、甘えるように見つめて。吐息が触れ合う距離で、山吹は露骨なほどに甘えた。
山吹が思っている通り、桃枝の心配は今さらだ。本人もさすがに、分かっているのだろう。
「……ッ。あぁ、クソッ」
「んっ!」
手を伸ばし、山吹の後頭部を掴む。そのまま桃枝は、山吹が望む通りにキスを贈った。
風邪が、うつるかもしれない。そんな危険性を孕んだ、桃枝とのキス。それは桃枝にとって幸か不幸か、山吹への素晴らしい興奮剤となった。
桃枝が山吹の頭を掴んでいない、空いている方の手。自由な片手が、山吹の体をまさぐり始める。
ピクッと、蠢く手の平に思わず反応を返す。すると桃枝は、山吹の胸元を布越しに撫で始めた。
「ん、っ。……はっ。課長、もっと……っ」
上半身をわざと、桃枝の手に押し付ける。最早『桃枝に理性は残っていない』と分かっていながら、それでも山吹は誘惑をやめなかった。
「乳首、触ってください。ボク、乳首を虐められるの……感じちゃうん、です」
「ちく、び……っ。……ここ、か?」
「あ、っ! も、もっと……っ。痛くしてほしい、です……っ」
爪が、乳首の先端を優しく引っ掻く。優しい手つきはそのままに、桃枝は山吹の乳首をつねった。
「んッ。つ、爪を立てて、乳首つねられるの……痛くて、気持ちいい……ッ。課長、もっとつねってください……ッ」
「……こう、か?」
「んぁッ! ……んっ、そう、です……ッ。気持ち、いぃ……ッ。もっと、もっとつねって……っ」
キスを交わしながら、胸を攻められて。そのお礼にと、山吹は腰を振る。
「あ、はぁ……っ。すごい、です。課長のペニスと、指ぃ……っ。どっちも、気持ちいい。気持ちぃ、です……っ」
「やめろ、山吹……ッ。そんなに動かれると、すぐに……ッ」
「ごめ、なさい……っ。でもボク、腰が止まらなくてぇ……ッ」
縛られた腕のおかげで、山吹は快楽のみをどん欲に求められた。
「お尻、きもちっ。乳首も、ジンジンして、ぁあ、っ! やっ、ペニスも指も──んっ、あ、あッ!」
桃枝から奪った分だけ、自らの理性も剥ぎ取られたかのように。
「──好きっ。課長、好きぃ……っ」
「──っ!」
山吹は譫言のように、好意を口にした。
その言葉は、桃枝が何度も何度も渇望した感情。ついに降り注いだ山吹からの好意に、桃枝は息を呑んだ。
「……い、ま。お前、今、俺のこと──」
しかし、桃枝の期待と希望は叶わない。
「──課長のペニスも指も、どっちも好きです……っ! もっと、もっとシてください、課長っ」
熱に浮かされ、瞳を蕩けさせた山吹が言葉を続ける。
付け足されたセリフに、桃枝は自分の勘違いだったと気付き……。
「……っ。……あ、あぁ。そう、だよな」
桃枝が発した単語に、落胆が滲んでいたとしても。快楽に耽る山吹は、気付いてあげられなかった。
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